二階堂大和のいもーとちゃん (ページ12)

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【前を】1 ページ12

あれから姉鷺さんに車で寮まで送ってもらい三人とは別れを告げた
まあ、勿論誰からも心配されるはずもないか
こんないるかいないかも分からないマネージャーだし。

「ただいま」

おずおずとドアを開けるとそこにメンバー全員の姿
…ではなくて壮五さん、ただ一人

「おかえりなさい、Aちゃん。
夕食は食べてきたかな？」

と立ちあがり、私を迎え入れてくれる
なんて紳士的なんだ。

「うん。外で済ませた。」

こう無愛想に可愛げもなく答えたとしても彼は優しいから困ったように笑ってそっか。と言った

「壮五くんは、どうしてここにいるの？」

と聞いてみた
笑って、Aちゃんを待ってたんだよと言った
きっと他のメンバーは各自の部屋にいて、私なんかのことを待つ気さえなくさっさと帰ったんだろうに。
特にやまにぃや環くんならハッキリしそうだ
ツーンとした態度で、私に対して冷めている態度をよくとる
たぶん、推測だけど陸くんや三月さんだって待ってくれようとしたのではないだろうか
でも一織くんが止めたんだろう。
だからいないのかな。

「Aちゃんを、待ってたんだよ。
久しぶりにゆっくりと話してみたかったしね。」

相変わらずの柔らかい言葉のキャッチボール
壮五くんと話すといつも心が落ち着いて癒される
なんだか嘘臭いような気もするけれど、この場は言葉を紡げばなんでも嘘になってしまうのだろうか
そして不覚にも照れてしまった

滅多にそんなこと言われないし。

「あーあ、壮五くんがお兄ちゃんだったらなー…」

つい声に出してしまった本音で、また彼を困らせてしまった

壮五くんは繊細なくせに優しくて周りを見て、それで溜め込んでしまうから。
私は少し言ってしまったことを後悔した。
ごめんね。

そう言いたかった
でも神様とやらはそうさせてくれなかった

「なあ、壮五～、いつまでAなんかを待ってるつもりだよ？」

やまにぃだ。
からかったように話しかけていたけれど目は本気に違いない
怖くて目を合わせられなくて、その場にさえもいたくなくて逃げ出してしまった

「Aちゃん！！」

「えっ、A？！」

二人の驚く声をよそに、ただまっすぐ、端に寄せられた自室へと走って行った

急げ、急げ、急げ。
誰かに会ってしまわないように、

走れ、走れ、走れ
会ってしまったら、きっと泣いてしまうから

泣き虫なんて、居る価値ないから。