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彼女のどこか一線引いた感じは、やっぱり職業故だった。
でもそれじゃあ余りにも悲しすぎる。
僕は貴女の商売相手ではなく友人であると思っているから。そんなすぐ切れるような縁にはしたくない。
「………貴女はとても優しいです。」
「!」
「こんなふうにちょっとしたことに対してお礼をしてくれて。細やかなことにだって気付ける人です。」
「そんなストレートに言われると照れるな」
「常に落ち着いていて正直年下だとは思えない安定感がある。仕事も正確で早いと聞きました。とてもしっかりしてらっしゃる」
「…突然どうしたんだい。」
「僕は、貴女の商売相手じゃありません」
だからそんな寂しいこと言わないで。
「お友達だと思っていたのは、僕だけですか…?僕からの評価、ちゃんと素直に受け止めてください。もっと欲しがってください。」
そう言うと彼女は目を丸くして驚いたようだった。
そしてふっと表情を和らげるとグラスを置いて口を開いた。
「……すまない。自分ではちゃんと普通の友人付き合いが出来ていると思っていたんだ。だいぶ感覚が麻痺していたんだな。」
冷めた料理を少し温め直そう、と彼女は席を立った。暫くして戻ってくるとまた食事に手を付けながらグラスを数回煽って言った。
「…君、実は私のこと結構好きだな?」
からかうような口調に少しだけムッとして応える。
「そうですよ。何か問題でもありますか」
「いや?実に光栄だよ。なんだ信じられないか?君のことをリヴィとでも呼んだら信じてくれるかい?」
今度は僕が目を見開いた。彼女からこんなに明確に距離を詰めてくるだなんて。この機を逃すわけにもいかない。
「なんて冗だ」
「呼んでください。」
「え」
「僕のことはリヴィと。Aさんは、どうやって呼ばれたいですか」
「…じゃあ、そのさん付けをやめてくれるかい。出来たら敬語も。」
「わかったよ。A。」
◇◆◇◆◇◆
外された敬語とさん付けに「ああ、これが友人か」とにやけてしまうような気持ちよさが胸に渦巻いた。
「ところでリヴィ、君はとても情熱的な人らしい。こんなにストレートに想いをぶつけてくれるなんて私にも恥じらう感情はあるよ」
「え、あぁ、すみません」
「しかしあまり興奮するのはいただけないな。また体調を崩す」
「なんでそれ…!」
「ふふふ」
本当に彼の情熱と素直さには、周りの人間は振り回されるだろうな。
〚まるで君は危ない薬だな〛
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bd(プロフ) - キッカさん» 私も思いましたが母がしていたので笑 美味しいんですよ…これからもよろしくおねがいします! (2022年7月8日 7時) (レス) id: acb9b65eb1 (このIDを非表示/違反報告)
キッカ(プロフ) - 土鍋に油入れて炒め物!?と思ってしまいましたが関係なく教授とキャメロンさんが幸せそうなのでOKです…!続編も今読ませてもらってます!これからの展開も楽しみです! (2022年7月7日 17時) (レス) @page45 id: a720bcf40a (このIDを非表示/違反報告)
bd(プロフ) - 春瀬さん» ありがとうございます!続編も引き続きよろしくおねがいします! (2022年7月7日 16時) (レス) id: acb9b65eb1 (このIDを非表示/違反報告)
春瀬(プロフ) - 素敵な物語をありがとうございます!みるみる引き込まれました。続編も楽しみにしています! (2022年7月5日 9時) (レス) @page50 id: eab317b5b8 (このIDを非表示/違反報告)
bana(プロフ) - みみさん» ありがとうございます!そう仰っていただけると幸いです! (2022年4月5日 0時) (レス) id: acb9b65eb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bd | 作成日時:2022年3月12日 0時