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「はじめまして。僕はニュート・スキャマンダー。魔法生物学者なんだ。君は?」
『……A・オリヴィア・ゴールドスタイン。ホーンド・サーペント寮よ』
敵対心剥き出しの割に、普通に対応してくれたことに驚く。ティナたちの教育の賜物だろうか。鋭い視線は変わらないけれど。
「ほら、そんなに拗ねてないで…」
『だって!』
途端にブラウンの瞳に涙が膨れ上がった。
そのことに僕はぎょっとしたけれど、ティナは慣れたように自らを見上げるAの頬に指を滑らせる。
『だっ、て、やっとバケーションで、家に、帰れると思ったらっ、クイニーはノー・マジとけっ、結婚するって、言うし、ティーニーはイギリスの男と、』
涙も零さず、大声も上げなかった。
もう子供じゃないというプライドなのか、ティナを困らせなくないっていう遠慮なのかは分からないけれど、どちらにせよ、僕にはとってもいじらしく見えた。
暫くティナの白いシャツに顔を埋めたかと思うと、突然パッとシャツを握りしめていた手を離す。
ぐい、と白い腕で乱暴に拭った目元は真っ赤だ。
『……ごめんなさい。子供みたいなことを言ったわ。スキャマンダーさん、ティナを宜しくお願いします』
文面は丁寧だけれど吐き捨てるように言ったAは、その小さな体を人混みの中に紛れ込ませた。
そうか、まだ学生だから学校外では魔法が使えないんだ。
なんて妙に冷静な頭で考えていると、ティナが軽くため息をつく。
「…ごめんなさいね、ニュート」
「いや、いいよ。…台風みたいな子だ」
「私たちに迷惑をかけまいと大人っぽく振る舞おうとしてくれてるの。…まだまだ親に甘えたい年頃なのに」
頑張って勉強して、私たちに恩返しするんだ、なんて言うのよ。
困ったように笑うティナには、確かに慈愛と誇らしさが滲み出ていた。
きっと、Aは姉2人が結婚して家を出ていくことが不安なんだろう。
そしてそれを望まない自分に腹を立てて、精一杯大人らしく振る舞い、姉たちに心配かけないよう、1人でも生きていけると証明したいのだろう。
幼い少女の後ろ姿を思い出し、ぎゅぅと胸が締め付けられるようだった。
(『やっちゃった、迷惑かけちゃった…!!!!』)
(『お姉ちゃんたちの幸せを願えない妹なんて、』)
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続かない
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木菟(プロフ) - まいまいさん» ほんとですか…!!ほっとしました…もしよろしければ続編の方もご愛読下さると嬉しいです!ありがとうございました! (2022年5月19日 22時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい(プロフ) - ありがとうございます!すごく素敵で良かったですˊᵕˋ♡ (2022年5月15日 15時) (レス) id: 2c18e857c2 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - kikuchi51さん» kikuchi51様、コメント、ご愛読ありがとうございます!!勿体無いお言葉です…ありがとうございます……!!!アンケートを作成しましたので、是非ご投票お願い致します! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - まいまいさん» お待たせしましたー!ぐだぐだした終わり方で申し訳ない……リクエストありがとうございました! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - ムスメ3さん» ありがとうございますー!ぐだぐだしたプロポーズが彼らしいかななんて……原作ではどうティナちゃんとくっつくのか楽しみです! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木菟 | 作成日時:2022年4月23日 20時