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ニュートにとって、あの名前も知らない女性との観光は思いの外楽しいものになっていた。
普段姿くらましやポートキーなどによって、ろくにニューヨークを観光していなかったせいか見るもの全て新鮮だった。海辺とは思えないほど高いビルの連なるバッテリーパーク。マグルはすごい。
そして今日もニュートは、例の路地裏でアメジストの彼女と合流していた。
『いたいた!魔法使いさん』
嬉しそうに彼をそう呼ぶ。正体としてではなく渾名としてそう呼ばれることに、ニュートはすっかり慣れてしまっていた。
『今日帰るのよね?』
「うん、」
『出発前に会ってくれてありがとう』
寂しくなるわ、なんて。一昨日会ったばかりの相手にいうことではない気がするが、ニュートは抵抗もなく僕もだよ、と返す。紛れもない本心だった。
重い沈黙を振り切るように、彼女が無理矢理口角を上げて笑う。
『貴方、綺麗な顔してるんだし、今回みたいに見ず知らずの女の言うこと聞くもんじゃないわ。もっと危機感を持つべきよ』
「…それ、そっくりそのまま君に返すよ」
美しいアメジストのような瞳は、世界規模で見ても珍しいものだ。綺麗な顔をしているし、路地裏になんて来てたら攫われかねない。
そう力説すると、意外そうに彼女が目を丸める。
『貴方、人間に興味あるのね』
「………どういう意味?」
『なんていうか、…そうね、人とっていうか、"私と"喋ってるみたいだったの。でも勘違いだったみたい』
「…いや、勘違いじゃないよ。人間には興味はないけど、"君に"興味があったんだ」
『え、』
「あと数回会ったら、多分僕は君のことを好きになるよ」
別れ際だからなのか、普段のニュートからは考えられないような台詞が彼の口から飛び出た。ちらりと彼女の顔を窺えば、驚きと羞恥と、確かな喜びが混ざった顔ではにかんでいる。
もう少しこの甘やかな時間に浸っていたいところだが、船の時間が迫っていた。
そうだ、と思い出したように彼は言う。
「僕の名前は、ニュート・スキャマンダー。レディ、君の名前は?」
『私はA・スカーレット・シンプソン。…また会える?』
「すぐ会いにいくよ。なんたって僕は本物の魔法使いだからね」
『え?ちょっとそれどういう、』
焦るマグルを他所に、微笑んだ魔法使いがパチンという音と共に姿をくらませた。
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先生は最後に爆弾を落とすスタイルだと思うんです…
リクエストありがとうございました!
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木菟(プロフ) - まいまいさん» ほんとですか…!!ほっとしました…もしよろしければ続編の方もご愛読下さると嬉しいです!ありがとうございました! (2022年5月19日 22時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい(プロフ) - ありがとうございます!すごく素敵で良かったですˊᵕˋ♡ (2022年5月15日 15時) (レス) id: 2c18e857c2 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - kikuchi51さん» kikuchi51様、コメント、ご愛読ありがとうございます!!勿体無いお言葉です…ありがとうございます……!!!アンケートを作成しましたので、是非ご投票お願い致します! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - まいまいさん» お待たせしましたー!ぐだぐだした終わり方で申し訳ない……リクエストありがとうございました! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - ムスメ3さん» ありがとうございますー!ぐだぐだしたプロポーズが彼らしいかななんて……原作ではどうティナちゃんとくっつくのか楽しみです! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木菟 | 作成日時:2022年4月23日 20時