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来てしまった。
ニュートは自分の天然パーマごと頭を抱え込んだ。来る必要なんてなかった。微塵もなかった。向こうが勝手に明日も来ると言っただけで、こちらは返事もしていない。
しかし、確かに聞こえた彼女の声を無視することは出来なかった。流石ハッフルパフ寮といったところか。
動物達を出すことも出来ずに、そわそわしながら待つこと数分。やがて路地裏には眩しいほどのアメジストが飛び込んでくる。
『…驚いたわ!まさか本当に来てくれるなんて!』
「君が来いって言ったんじゃないか…」
『貴方の手品が素敵だったから…すごく強引だったわ。ごめんなさい』
素直に謝られ、ニュートはそれ以上嫌味を言えなくなってしまった。もご、と居心地悪そうに口を歪ませる。
「…いいよ。時間があったんだ」
『でもそのトランクと訛り、イギリスからの旅行客よね?いつごろ帰るの?』
「……よく分かったね。明日の昼には船に乗って帰るよ」
『…あ、なら、手品見せてくれるお礼にニューヨークを案内しましょうか!あなた生白い顔色してるし、数日外に出ていなかったんじゃない?』
「…ほんと、よくわかるね。探偵になれるんじゃない?」
『まさか!』
で、どう?と善意100%の笑顔で問われちゃたまらない。もともと動物に関すること以外は意思のない彼なので、反射的に頷いてしまった。
『決まりね!どんな手品を見せてくれるの?』
「……そうだな、」
オーキデウス、と心の中で唱える。ニュートは無言呪文を苦に思わないほどには優秀な魔法使いであった。
彼の呪文に呼応して、杖の先に一輪の花が咲く。
途端に彼女の瞳がパッと輝いた。
『綺麗…!すごいわ、全く仕掛けが分からなかった!』
「はは、」
仕掛けなんかないからね。
心で呟きながらも、杖の先から花を引き抜いて彼女に手渡せば白百合のように笑う。
『アガパンサスね』
「そうなの?」
『あら、知らなかったの?』
『僕のトラン…じゃなくて、えっと、生えてたんだ。どこだかは忘れたけど。はは、』
『…そう。ありがとう、魔法使いさん』
え、とニュートは心臓を掴まれたかのように固まるが、正体を見破られたわけではないらしかった。ん?と小首を傾げられ、慌てて何でもないと首を振る。
『じゃあ何処に行きましょうか!バッテリーパークとか行ったことある?』
「…いや、ないかな」
『なら決まりね!』
ニューヨークの街に、マグルの女と魔法使いが身を紛れ込ませた。
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木菟(プロフ) - まいまいさん» ほんとですか…!!ほっとしました…もしよろしければ続編の方もご愛読下さると嬉しいです!ありがとうございました! (2022年5月19日 22時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい(プロフ) - ありがとうございます!すごく素敵で良かったですˊᵕˋ♡ (2022年5月15日 15時) (レス) id: 2c18e857c2 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - kikuchi51さん» kikuchi51様、コメント、ご愛読ありがとうございます!!勿体無いお言葉です…ありがとうございます……!!!アンケートを作成しましたので、是非ご投票お願い致します! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - まいまいさん» お待たせしましたー!ぐだぐだした終わり方で申し訳ない……リクエストありがとうございました! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - ムスメ3さん» ありがとうございますー!ぐだぐだしたプロポーズが彼らしいかななんて……原作ではどうティナちゃんとくっつくのか楽しみです! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木菟 | 作成日時:2022年4月23日 20時