住むところは違っても、 ページ45
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ニューヨークのとある薄暗い路地裏にて。
ニュート・スキャマンダーは、狭い道を器用に駆け抜ける魔法動物のニフラーを追いかけていた。
「ちょ、て、てでぃ、待っ、」
とは言え、相手は小さな身体なのに対し、彼はれっきとした成人男性。ポリバケツや積まれた雑誌を避けてニフラーを追いかけるには、中々無理があった。
人間、大変な状況に追い込まれれば楽な方へと逃げたくなる。だからついつい使ってしまったのだ。
「アクシオ!」
途端にニュートへ引き付けられたテディは、路地の奥の方へ転がっていってしまった金ピカのボタンを名残惜しそうに見つめる。
視界の端にちらりと映っただけの誰かのコートのが取れたのであろうそれを執念深く追いかけるのは、主人からしたら厄介でしかない特性である。
…しかし、そんなものは可愛く思えるくらい、ニュートは厄介な状況へと立たされていた。
『今の…』
女性特有のソプラノに、彼はバッと振り返る。プラチナの髪の女性が、その紫の瞳を丸くしてニュートの方をじっと見ていた。
しまった、こんな路地裏に人がくるなんて!
冷や水をぶっかけられたかのように、ニュートの心臓は縮こまってしまう。懐から出ている杖に、自らの腕に収まる先程まで遠くにいた黒い生き物。
言い逃れは出来ない。すぐにでもオブリビエイトしなくては。
しっかり脇をしめてテディが逃げないようにし、杖を女性に向けたのだが、
『まぁ、もしかして手品の練習!?』
という驚きと感動に満ちた声で彼女が叫ぶものだから、ニュートは思わず杖を引っ込めてしまった。
手品。確かマグルの世界で魔法とよく似たものだったはず。ニュートは随分前にマグル学の授業で得た知識を引っ張り出した。
あれには仕掛けがあって、魔法とは全く異なるものであるらしい。
女性が勘違いしていることに気がついた彼は、コートの中に杖を突っ込み、彼女から少しずつ距離を取る。
「…はは、そう、…何だっけ、」
『手品?』
「そう、それ。手品さ」
『凄かったわ!もしかして有名なマジシャン?』
「ぇ、あ、うーん、どうかな…ごめん、僕急いでるんだ」
じゃあね、と彼女に背を向けた瞬間、彼女はとんでもない事を言い出した。
『ねぇ、明日も手品見せてよ!私、ここで待ってるから!』
思いがけない言葉に止めそうになった足を無理やり動かして、角を曲がった瞬間にニュートは姿くらましをした。
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木菟(プロフ) - まいまいさん» ほんとですか…!!ほっとしました…もしよろしければ続編の方もご愛読下さると嬉しいです!ありがとうございました! (2022年5月19日 22時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい(プロフ) - ありがとうございます!すごく素敵で良かったですˊᵕˋ♡ (2022年5月15日 15時) (レス) id: 2c18e857c2 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - kikuchi51さん» kikuchi51様、コメント、ご愛読ありがとうございます!!勿体無いお言葉です…ありがとうございます……!!!アンケートを作成しましたので、是非ご投票お願い致します! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - まいまいさん» お待たせしましたー!ぐだぐだした終わり方で申し訳ない……リクエストありがとうございました! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - ムスメ3さん» ありがとうございますー!ぐだぐだしたプロポーズが彼らしいかななんて……原作ではどうティナちゃんとくっつくのか楽しみです! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木菟 | 作成日時:2022年4月23日 20時