幸せのフレンチトースト ページ4
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AM7:30。
ぱっちりと目を覚まし、朝の日差しにそのマリンブルーの瞳を晒したAは、隣で眠る夫を起こさないようにのそのそとベッドから這い出る。
散らかった部屋を魔法で片付けながら進み、洗面所で顔を洗ってからリビングのソファにかけておいたエプロンを身につけた。
冷蔵庫を確認する。
Aを包むひんやりとした冷気に身を震わせながら中を見ると、まず目に飛び込んできたのは4つも余った賞味期限が明日に迫る卵たち。
パックごとそれを出して献立を頭の中で組み立てながら冷蔵庫を閉めると、視界の隅に黒い塊を捉えた。
『おはようテディ。今日はニュートより君の方がはやいのね』
卵をステンレスの上に置いてから屈んでうりうりと見事な黒い毛並みを撫でてやる。
Aはその艶やかな黒を黒曜石みたいだ、と思うけれど、彼女の夫は黒曜石をニフラーみたいだ、と例えるだろう。
テディが満足気に鼻を鳴らしたのを見て、すっくと立ち上がったAはよーく手を洗う。汚いとかそう言う話ではなくて、衛生上の話だ。
魔法で取り出したボウルに卵を全て割り入れ、切るように混ぜる。白身と黄身が一体化したら止めてよし。
冷蔵庫からミルクを、棚から白砂糖を取り出し、目分量で卵に加えて混ぜる。昨日はお疲れのようだったから、砂糖はいつもより多めに。それからバニラエッセンスを少し。
足元から聞こえるすぴすぴと鼻から抜ける寝息に口元を緩ませながら、Aは作業を続ける。
半分残っていたフランスパンをスライスして卵液に漬け込む。魔法で密封したら暫く放置。マグルには魔法がなくても物を密封できる道具があるらしい。マグルってすごい。
漬けてる間にサラダを作る。
レタスにトマト、きゅうり、ハーブチキン。サラダボウルに盛ったそれらにバジルドレッシングをひと回し。
パンはニュートが起きてから焼こうと、Aは気持ちよさそうに足元で寝ているテディを抱き上げた。その拍子にテディがうっすらと目を開くが、すぐに安心したように目を閉じる。
極力揺らさないように歩みを進め、夫婦の寝室に続くドアを開けた。
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木菟(プロフ) - まいまいさん» ほんとですか…!!ほっとしました…もしよろしければ続編の方もご愛読下さると嬉しいです!ありがとうございました! (2022年5月19日 22時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい(プロフ) - ありがとうございます!すごく素敵で良かったですˊᵕˋ♡ (2022年5月15日 15時) (レス) id: 2c18e857c2 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - kikuchi51さん» kikuchi51様、コメント、ご愛読ありがとうございます!!勿体無いお言葉です…ありがとうございます……!!!アンケートを作成しましたので、是非ご投票お願い致します! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - まいまいさん» お待たせしましたー!ぐだぐだした終わり方で申し訳ない……リクエストありがとうございました! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - ムスメ3さん» ありがとうございますー!ぐだぐだしたプロポーズが彼らしいかななんて……原作ではどうティナちゃんとくっつくのか楽しみです! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木菟 | 作成日時:2022年4月23日 20時