酒は呑んでも呑まれるな ページ30
**
4年ぶりのスコットランド。
姿現しをしたせいでぐらぐらする頭を無理やり振って、三半規管を叩き起こす。
この4年間、本当に色んなところをまわった。
本職はホグワーツの教員だけど、たまに国際魔法使い連盟に依頼され、偵察要員として世界中を飛び回ることがあるのだ。全部在学中にアニメーガスを取得しようとか言うミネルバが悪い。彼女は彼女で私の分の仕事までこなしてるから、どっちが大変とは言えないけど。
ホグズミード駅のベンチに腰を下ろす。ここにある自宅は屋敷しもべのアヴィが掃除してくれている。うちのアヴィは優秀だ。お節介な兄さんも満足するくらいには。
と、そのとき、目の前でぱちんと音が鳴り、見慣れたブロンズの男が現れた。
「意外と到着が早かったんだな」
『…噂をすればってやつね』
「何がだ？」
『別に？』
お気になさらず、とわざとらしく笑って見せれば怪訝そうな顔をする兄、テセウス。局長ともなれば忙しいだろうに、よく時間をつくってくれたものだ。
ベンチから立ち上がって軽くハグをし、チークキスを交わす。
「仕事はどうだ？」
『国連の人使いが荒くてね。そっちは？』
「変わらずやってるよ」
近況報告をすれば、「元気そうで何よりだ」と大きな手が私の頭をぽんと叩いた。相変わらず暖かい手だ。
だがしかし、可愛い弟のニュートが来ていない。彼も自身の本が飛ぶように売れて、忙しい日々を送ってるんだろうけど。
『ニュートは？』
「迷ってるんじゃないか？」
『姿くらましをするのに？』
「場所を間違えたとか」
まさか、と返そうとした瞬間に、ぱちんと音をたてながら姿現しで登場した我が弟。よっぽど慌てていたのか、ただでさえ癖っ毛な髪の毛がぐしゃぐしゃだ。
「お、遅れてごめん…あの、」
『「噂をすれば…」』
「え、何？」
まさか兄さんとハモるなんて。くすくすと彼と笑い合ってから、きょとんとするニュートに『何でもないわ』と笑ってみせる。
『会いたかった！』
「僕もだよ」
『本の出版おめでとう。お姉ちゃんとっても誇らしいわ』
腕を広げて弟をその中に閉じ込める。といっても、私よりかなり背が高いから実際には閉じ込められていないんだけど。頬を差し出すと、すこし躊躇しながらもキスをくれたので、私も同じようにお返しをした。
挨拶を終えてそっとニュートと離れてから、仕切り直すようにぱん、と手を叩く。
『さ、うちに招待するわ！2人の話、もっと聞かせてね』
**
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 201人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
木菟(プロフ) - まいまいさん» ほんとですか…!!ほっとしました…もしよろしければ続編の方もご愛読下さると嬉しいです！ありがとうございました！ (2022年5月19日 22時) (
レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい(プロフ) - ありがとうございます！すごく素敵で良かったですˊᵕˋ♡ (2022年5月15日 15時) (レス) id: 2c18e857c2 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - kikuchi51さん» kikuchi51様、コメント、ご愛読ありがとうございます！！勿体無いお言葉です…ありがとうございます……!!!アンケートを作成しましたので、是非ご投票お願い致します！ (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - まいまいさん» お待たせしましたー！ぐだぐだした終わり方で申し訳ない……リクエストありがとうございました！ (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - ムスメ3さん» ありがとうございますー！ぐだぐだしたプロポーズが彼らしいかななんて……原作ではどうティナちゃんとくっつくのか楽しみです！ (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：木菟 | 作成日時：2022年4月23日 20時
