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数十日後。
突然手紙を咥えたフクロウが我が家に飛び込んできた。訃報だった。Aの両親の。
両親は気遣いながら、そして目に涙を浮かべながらもAにはっきりと事実を告げる。
『…そう。やみばらいだもの、きっとだれかを守って死んだんだわ』
泣き叫ぶかと思っていた。崩れ落ちても仕方がないと思った。
しかし、彼女は一度ゆっくり瞬きをして『今までありがとう』と笑った。
どうして笑うの。辛くないの。悲しくないの。
いつの間に纏めていたのか、Aは彼女の体には大きすぎるトランクを1つ持って暖炉の前に立つ。
誰がつけたのか、暖炉には火がついている。暑くて暑くて、部屋にいる全員の体を汗が濡らした。
「行く当てがあるのか」とテセウスが尋ねると、『あるわ』と短く答える。
淡々とフルーパウダーを掴み、火に向かって放り投げる小さな背中に思わず手を伸ばした。
それに応えるように、振り向いた彼女の瞳と目が合う。けど、それも一瞬だった。
すぐに暖炉へ視線を戻したAが高らかに叫ぶ。
『グリム通り!』
「行かないで!」
僕の叫びは何の効果も持たず、行き先に迷って空気に消えた。
夏場には似合わない、緑から赤に戻った炎だけがメラメラと燃えていた。
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木菟(プロフ) - まいまいさん» ほんとですか…!!ほっとしました…もしよろしければ続編の方もご愛読下さると嬉しいです!ありがとうございました! (2022年5月19日 22時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい(プロフ) - ありがとうございます!すごく素敵で良かったですˊᵕˋ♡ (2022年5月15日 15時) (レス) id: 2c18e857c2 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - kikuchi51さん» kikuchi51様、コメント、ご愛読ありがとうございます!!勿体無いお言葉です…ありがとうございます……!!!アンケートを作成しましたので、是非ご投票お願い致します! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - まいまいさん» お待たせしましたー!ぐだぐだした終わり方で申し訳ない……リクエストありがとうございました! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - ムスメ3さん» ありがとうございますー!ぐだぐだしたプロポーズが彼らしいかななんて……原作ではどうティナちゃんとくっつくのか楽しみです! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木菟 | 作成日時:2022年4月23日 20時