何と名付けて飾ろうか Ⅱ【摂津万里】 (ページ25)

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花の名前７３ページ25

自我をなくした４年間は無駄かもしれなかったけど

1つ学んだ事はある

私は生まれてから父の、天那の人形でしかなかった

遊んでいる持ち主が操る通りに動く

相手が飽きるまで、糸で吊るされて動く

足場もないまま吊るされて、いつ落とされて壊されるかは主人次第の蝋人形

そんな過去があるからこそ、私はもう人形にはならない

自分の意思で自由に行動する

汚い大人のエゴなんかに左右されない、私はここで人間になれたんだ

みんなのおかげで

万里side

ずっと、真白は俺と同じようなもんだと思ってた

なんでも完璧にこなせる、運動も勉強も、何もかも

誰よりも上手くできるから、退屈で飽き飽きした

けど、真白と俺には違うところがある

俺も小さい頃は

『天才だ』『何でもできてすごい』『将来が楽しみ』だなんだ言われた事があった

だけど、真白は最初からがんばったって褒められない

『何でもできてすごい』が『天那はできて当たり前』だったんだ

がんばったって無駄、それでもめげずにがんばったって結果は同じ

そこからもう、心が無くなってったのかもな

真白「ていうかんじで、伝わった？」

本当は自分のつらい過去思い出してつらいくせに、無理に笑顔つくってやがる

いづみ「うん…」

その場にいたほとんどがつらさが伝わったのか薄っすらと目に涙をためている

監督ちゃんの言葉にほっとしたのか小さな階段を下りて俺たちと同じ目線になる

万里「おい、真白」

真白「なに？」

ホント、俺らと負けず劣らずの演技力だよな

万里「人間になったんだろ？
だったらお前の心丸出しにしていいんじゃねぇの？

ここには
心のままに言ったって、相手の命令に従わなくたって罰せる野郎なんか何処にもいねぇよ
ここだけでも、その張り付いた仮面取れよ」

真白「…」

気づけば真白の顔は涙で濡れていた

そしてその場にしゃがみこむ

太一「あー！万チャンがまっチャン泣かしたッス！」

万里「泣かしてねえよ！」

真白「うぅぅ…」

泣いている真白は、いつもより弱々しく見えた

そんな真白に俺はしゃがんで抱きつく

万里「真白はすげーよ、無駄だってわかってても突っ走ってたんだろ？

俺よりよっぽど強えーじゃんか」

真白「…」

真白も落ち着きを取り戻してきたらしい