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５０年以上前＿＿
あの頃のぼくは海岸にある洞穴に住んでて、散歩しては寝て、散歩しては寝てを繰り返していた
その日もいつも通り、ただ歌って寝るだけ、そう思っていると
「おい…中から何か聞こえるぞ！！」
「おどかすなよ！気のせいだって…！！」
「そ…そうですよ！！空耳です空耳！！オバケだったらどうするんですか！！」
『………』
洞穴の入り口から声が聞こえて来た
こんな何もない洞穴に何の用だ…？とその場に留まりながらじっとしていると
入ってきた誰かのランタンの明かりがぼくの身を照らした
「うおあああ！！な…何かいた…！！」
「ほ…ホントだ…！！」
入ってきたのは海賊で、何しに来たのか聞こうと口を開くも
『…な……………き………ぁ…』
何百年か人に会わずここに留まっていたからか、話したのなんか久しぶりで、発した言葉は全てカスカスだった
「オ…オバケエエェェェェエ！！」
中でも一層細身で身長が高い紳士らしき男が情けなく悲鳴を上げた
「お前、ここの守り神かなんかか？」
一人、慌てたぼくを見た男が声をかけてきた
「違う」と首をふれば男は「そうなのか」と答えた
「おれ達ァここに財宝が眠ってそうな気がしたんだが…そこんとこどうなんだ？」
ぼくが「何言ってんだ？」と顔を顰めるとどうやら伝わったようでみなその場に項垂れる
その後ジェスチャーをしながらも会話をすればすぐに仲良くなった
仲間にならないかと誘われたが、「今はその気にならない」と答えた
が、ぼくもそろそろ寝床を変えたいと伝えれば次の島まで乗せてくれる事になった
船には他の船員もいたがすぐに打ち解け合い、仲良くなった
その航海は今でも鮮明に思い出せる程楽しかった
最後にもう一度誘われたが、「また出会えたら考えてあげる」と答えて彼らと別れた
彼らとはそれきり会っていない
みな、今も生きているだろうか
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作者名：織 | 作成日時：2022年9月5日 10時
