7話 ページ8
*少しだけ描写あります
「やっ……んっ… やめてっ… 」
初めての感覚が、全身を襲った。
マジで気持ち悪いよ… もうやだ… 本当にやめて…
そうだ、バーボンさんには合図を出すまでは邪魔をするな、と言ったのだった。
そりゃあ… 来ないよな… 自業自得だよな…
「…泣いているじゃないか… 可愛い顔が台無しだよ? 」
「んっ…だって……むり…っ」
涙を堪えようとしたけど、無駄だった。
任務なのに、仕事なのに、体が拒否する。
さっさと終わらせて、出て行こう、そう思ってるのに、!
_____パァン
「っえ、?」
銃声(多分)と共に、血を吹いて倒れる男。
突然のことに、朦朧としていた意識がハッと戻る。
涙に視野が霞む。
目の前に立っていたのは… 紛れもない、彼であった。
「…っ、ロゼ、とりあえず服を…」
「えっ、あ、ごめんなさい」
背を向けている彼の後ろで、急いで服を着る。
手が震えて、なかなか着られない。
思わず自分の唇を強く噛んだ。
とりあえず、早く…出なくちゃ!
「……大丈夫、じゃないですよね」
「あの、USBは?」
「あぁ、それはここに… 」
そう言って、彼はすぐそばの引き出しからUSBを取り出した。
「っ、すみません!」
「え、ちょ、なんですか」
頭を下げるバーボンさん。
…ん? なんで謝るの?
え、バーボンさん完璧だったよ?
「えっと、とりあえず頭をあげてください」
「……はい」
「なんで、貴方が謝るんですか! 謝らなくちゃいけないのは、私の方です。合図、出せなくてすみません」
「違うんです。僕が、もっと早くに駆けつけていれば、こんなことには… 」
「何言ってるんですか。私は貴方に合図を出してから、乗り込むように言いました。私の方が… 」
「貴方が出てくるのが遅い、そう違和感を感じていました。すみません、そこで行動するべきでした」
…なんて、律儀な人なんだろう。
そりゃあ、まぁ、多少はあれだったけど、そこまで気にしてない。
初めてがあの男なのは……癪に触るけど。
「と、とりあえず、帰りましょ? ここに居てもあれですし」
「えぇ、そうですね… 」
悔しそうな顔をするバーボンさん。
なんだか、変な気持ちだ。
彼が悔しそうにするのは、紛れもなく私が原因。
申し訳なさでいっぱいな筈なのに…
なんで、嬉しいって思ってしまうのだろう。
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作者名:紅月 | 作成日時:2020年3月1日 13時