ナイトジュエリー 2nd

幸福のオパール ページ10

「大ちゃん」



有岡が放心状態でいると誰かがブラウンケットをかけてきた



「山田…」



「何があったんすか？声めっちゃ聞こえましたよ」



有岡は驚き顔を隠す



「大ちゃんって照れると鼻を触るんだ」



「や、やめろよ。…恥ずかしい」



山田はそっと有岡の隣に座る



「…喧嘩？」



「それだけ軽かったらいいのに」



有岡はボソリと呟く



夜になるとまだ寒い春は有岡の心を冷たくした



「…暖かいもの、持ってきますね。まだ、家の中に入るの辛いだろうし」



山田はそのまま家の中に入っていった



有岡はブラウンケットを羽織り直す



「家庭と幸福じゃない。サッカーも勉強も。…本当に幸福じゃない」



有岡は頭を抱える



するとどこからか声が聞こえた



「だったら忘れちゃえばいいじゃん」



有岡は驚いて周りを見渡す



周りに人影なんて見えない



「どこ見てるの？上だよ」



有岡が上を見ると木の太い枝に誰かが座っていた



「よっと」



その人物は有岡の前に飛び降りる



その姿はまるで猫のようであった



「ね…こ…？」



「僕の名前は猫じゃないよ」



その人物はくるりと一回転し、言った



「僕の名前はジェット。忘却って意味の宝石だって」



「忘…却…？」



ジェットは有岡に近づく



「幸福じゃないならさぁ、その事全部忘れちゃえばいいじゃん。僕が忘れさせて上げるから」

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