ナイトジュエリー 2nd

意志のサファイア ページ20

「ただいまー」



伊野尾が家に帰ると



「お帰りー」



奥から女の声が聞こえた



「…ハァ」



伊野尾はため息をつきながらその部屋に行った



「慧ちゃん。大学の話があるの」



最近は帰って母親がいるとすぐに大学の話となる



「母さん…」



「ここも良いわよね。偏差値も高いし、有名だもの」



「…」



伊野尾は何も言わない



「いい？慧ちゃん」



母親は伊野尾の手を握った



「将来をね、いいものにする為にはいい学校に入って、いい成績を取らなきゃいけないの。慧ちゃんが平成高に入りたいって言うから私は仕(・)方(・)な(・)く(・)入学させてあげたの。…その恩忘れちゃったの？」



何も返せない



伊野尾はそれが嫌だった



「本当は令和高が良かったのに…。あんな男子校じゃなくてちゃんと共学で…」



伊野尾は黙って自分の部屋に行った



そして机の上に置いてあるパソコンを起動させ、パスワードを入力する



するとデスクトップの中に『夢』と書かれたフォルダがある



それをクリックすると何やら図面が出てきた



伊野尾の夢は建築家



その為には建築学科がある大学に進まなければならないが母親が進める大学にはない



それに関して伊野尾は反論したいが出来ないのが現状



「俺の…意志…か」



伊野尾はそう呟いてからまた作業を進めた

意志のサファイア→←意志のサファイア

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す