【ブラックペアン】オペ室の五人。 2 (ページ25)

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紫芋のモンブラン 7 ページ25

その頃、松本は一人ベットの上で体育座りをしていた。

「兄貴‥あ、あにきぃ‥」

まるで何かに取り憑かれたかのように空っぽな声でひたすら兄のことを呼ぶ。

外で聞いていた車椅子に乗った二宮とその後ろを歩いていた大野たちは俯いて聞いていた。

「あれ、爽太郎‥？」

相葉は俯いた顔をあげて爽太郎の端正な横顔を見つめた。

その左手にはしっかりと包帯が巻かれていた。

「爽太郎‥左手、どうなの？」

相葉は聞いたらいけないことを聞いたような気がしてさらに気が引けた。

櫻井も少し気になったようです耳がピクっと反応した。

二宮も車椅子を少し引いた。

「もう、動かないよ。

これから一生‥」

爽太郎のいつもよりワントーン低い声に大野たちは背中を震わせる。

「ウソ‥でしょ？

医者は！？

これからどうなるの！？」

櫻井が驚いたかのように声を上げる。

爽太郎は静かに四人を睨む。

正確には睨んではいない。

大野たちの感覚では睨まれたかのように見えたのだ。

「知らねぇよ。そんなの。

左手が使えなくたって医者なんかできる。」

「でも！

手術ができなくなるじゃん！」

「そこをどうにかするんだよ。

俺様は天才だろ？」

「無理だろ‥」

二宮は静かに呟いた。

その声は誰にも聞こえることなく風にのって何処かへ飛ばされていった。