あの日のように笑えたら (ページ13)

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１１話ページ13

章大side

カンファレンスルームに歩花ちゃんのご両親を呼んで話をはじめる。

章「以前まで投与していた抗がん剤ですが…、

残念ながら、効果が見られませんでした。脳の腫瘍も進行しています。いつ急変しても、おかしくない危険な状態です。」

ご両親は下を向き、俺も声を出せずに目の前のテーブルをただ見つめてた。長い沈黙が辺りを包む

どのくらい時間がたったのか、お母さんの声で顔をあげた。

母「あの子……、あの子頑張ってるんです…。 “元気になったら学校行くんだ！"って…！

その為に、たくさんのこと我慢して来たんです。…それなのに、あの子の頑張りは無駄だったんですか？」

お母さんは真っ直ぐ俺を見て睨むような、悲しそうな顔をして、そう言った。

章「……すみません…。今の医療では、治すことが出来ません……。」

母「嫌！！…あの子を助けてください！何でもしますから、あの子が元気になるためなら何だってします！
だから……、私達からあの子を奪わないでください！！」

お母さんは机に伏せて炊き出した。

父「安田先生。あの子に残された時間は、どのくらいなんでしょうか？」

お父さんが静かに、震える声で聞いてきた。

章「娘さんは、………もって、あと１ヶ月程かと思われます。」

１ヶ月。

そう余命宣告をされても、１ヶ月以上生きた人もいる。
反対に、病状が悪化して１ヶ月以内に亡くなる人もいる。

父「１ヶ月……ですか。」

章「はい……。

あの、娘さんにはお伝えしますか？」

父「どうしたら、良いんでしょうか…？

あの子に、どう伝えたら…？」

俺は数冊の絵本を差し出す。

どれも「死」「天国」をテーマにした絵本。幼い子にも理解できるようになっている。

章「娘さんには、このような絵本を見せながら説明していくのがよろしいかと…

ご希望でしたら、うちの精神科医をご紹介させていただき、精神科医を交えた場で伝える事も出来ます。」

父「すいません……。少し時間を頂いてもよろしいですか？妻とも話し合って決めたいので。」

章「ええ、どうぞ。この部屋をお使いください。

僕、院内に居ますので、何かあったらお声掛けください。」

そう言ってカンファレンスルームから出ると、お父さんの泣き声が聞こえて来た。

その声が何故だか自分が責められているように聞こえてて耳を塞いで、走って逃げた。