story31 気持ちのすれ違い ページ33
陽毬side
ナルが新入生のパートナーを僕と棗にした事で、どよめく教室。彼の采配に不満を持った取り巻きたちがツインテールに絡んでいるのを遠巻きに眺めていると不意に隣から肩を叩かれた。
「おい、陽毬。ちょっといいか?」
「……ん、なに?」
声をかけてきたのは棗で、彼の方に顔を向けるとやはりまだ怒った顔をしていて、きっと昨日のことを気にしているんだろうなと思うと、気まずくなる。
この白猫の罰則面のおかげで、眉を下げた顔を彼に見られないのは幸いだった。
「ちょっとこっちにこい。」
棗は急に立ち上がって、僕の手を取ってから力を入れて僕を立たせる。そしてそのまま手を引いて、教室の外まで連れ出された。
彼がぴしゃりと扉を閉めると、中にいる時の騒がしさは薄れ、静かな空気が流れる。
「なぁ陽毬。なんでお前は昨日、俺を庇って罰を受けにいったんだ?」
「なんでって、それは……棗に、傷付いて欲しくなかったからだよ。」
二人の間に沈黙が流れる前に、棗は険しい顔のまま口を開いた。
僕は一瞬答えに詰まって、間を空けてしまう。なぜ僕があんな行動をとったかなんて分かりきったことを聞かれるなんて思ってもいなかった。
棗は任務中に敵の襲撃から僕を守ってくれたり、『あの方』の罰から庇ってくれたりしていた。勿論僕も棗の任務を肩代わりしたりと、日常的にお互いを助け合っていて、たまたま今回は僕が棗を庇う番だっただけ。
「俺は昨日、自分に腹がたった。」
だから棗がなんで怒っているのか理解できなかった。
「……陽毬が傷付いてるのを助けられなかった自分が嫌だった。」
僕が首を傾げて棗の名前を呼ぶと、ポツリと消えそうな声が聞こえた。
「俺はっ……流架だって、陽毬のことが大事なんだからな」
くしゃりと心底悔しそうに、寂しそうに歪められた顔を見て、心臓を殴られたような気持ちになった。彼を助けたくてとっていた行動なのに、こんな顔をさせてしまうなんて。
「棗……ごめん。僕、ほんとに棗も流架も大好きだから、僕の前で傷付いて欲しくなくて!」
自分の行動を悔いて、彼を助けたつもりでいた自分が恥ずかしくて俯いた。
「……ばーか。そんなことは分かってる。」
ポンと頭に手を置かれる。そのままくしゃりと頭を撫でられ、背中をさすられる。
子供扱いされているみたいで恥ずかしかったけれど、妙に心地よくて、そのまま棗に体を委ねる。
そのときばかりは頭痛なんて気にならなかった。
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えるふぃ(プロフ) - やしろさん» へぇー、結構占ツク徘徊してたんだ!笑 あー、夢小説漁っちゃうのわかる!私の場合、漁ってる途中にむずむずしてなんか話書きたくなるんだけど…笑笑 やしろの期待に添えるような話が書けてるといいなぁ(*´ω`*) (2018年9月14日 0時) (レス) id: 2df896d132 (このIDを非表示/違反報告)
やしろ(プロフ) - えるふぃさん» お久しぶり…!と言っても実は結構な頻度で占ツクにはいるんだ〜!読み専と化してる(笑) けど根っからの夢女子だから新ジャンル行っても必ず夢小説漁ってるからホントここにはお世話になりっぱなしです!学アリ熱は周期的にくるから、よく読んでるよ!! (2018年9月13日 18時) (レス) id: ec62b59ee0 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - やしろさん» わぁ、やしろお久しぶりね!修正版の方読んでくれてて嬉しい!しばらく連絡取れなかったから、もう読んでくれてないと思ってた…笑 自分で書きながら棗や夢主みて悲しくなったりしてるから重症だよね(*´ω`*) また更新するね!見てくれてありがとう(*´ω`*) (2018年9月12日 15時) (レス) id: 2df896d132 (このIDを非表示/違反報告)
やしろ(プロフ) - えるふぃ、お久しぶりです!修正版「君と一緒に」もちょこちょこ読ませて頂いてました!夢主ちゃんや棗の優しさが格段に分かりやすく伝わってきて、もうホント好き!って感じ……!これからどんどん修正版の更新がされてくのを待ってます! (2018年9月11日 20時) (レス) id: ec62b59ee0 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - 波音さん» そう言っていただけると頑張って修正したかいがあります!褒めていただけると一気に疲れが吹き飛びますね笑 最近更新できていなかったのですがまた近々更新してみようと思います!ありがとうございます(*´ω`*) (2018年8月3日 3時) (レス) id: 2df896d132 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えるふぃ | 作成日時:2013年11月22日 7時