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160.ぼやけた花火 ページ10

ついに口にしてしまった。

 もう、元には戻れない。


「…どういうことですか?」


 彼女の瞳がひどく揺れた。

 遠くなる花火の音。

 喉が張り付くような感覚。


 Aを見ていると、今にも心が揺れてしまいそうで…

 俺は目を落とした。


「そのままの意味だ。」


 A、悲しませるのはこのひと時だけ。

 きっとこのひと時だけだから…


 俺と一緒になって、近いうちに俺がいなくなったとしたら

 今以上の辛さを君に与えてしまうかもしれない。


 君が大切だから、愛しているから…

 そのようなこと、俺が許せないのだ。


「君といると辛いんだ。ただそれだけだ。

 他意はない。」


 突き放すように冷たい言葉を浴びせてしまった。

 心は鉛のように重たい。



「納得…できないです。」


 空に打ち上がる花火を見上げる。

 生あるうちにAと花火を見ることができて良かった。

 本当に良かった…


「…すまない。」


 自分から告げたくせに胸が押しつぶされそうで、

 明るい閃光は瞳でぼやけた。



「…お気持ちは変わらないの…ですね。」



 火薬の匂いが鼻を掠めて、篭った音が耳の奥で轟く。

 この決意は変わらない。

 彼女の幸せを願うことだけは揺るがない。



「変わらない。」


 
 彼女は静かに指の腹で涙を拭った。

 

 怒ってくれて良いんだ。

 罵ってくれてかまわない。

 いっそ、俺のことを嫌いになってくれたら…



 まだ揺れそうなこの心は潔く諦めがつくのに。



「…分かりました。」



 そう受け入れる返事をしたAの顔をちらりとうかがう。


 一方的に酷いことをしているのに、

 Aは感情をぶつけてこない。


 思うことはたくさんあるはずなのに…

 
 彼女はどこまでも優しい。


 A、すまない。



「…ありがとう。
 
 時々顔を出すが、俺は当分生家には戻らない。

 だから、君は生家にいてくれて構わないから…」


 身寄りがないから。

 しかし、そう言った理由はそれだけでないのかもしれない。

 できれば、俺の知り得る場所にいて欲しい。

 そうすれば近くでなくとも陰ながら守ることはできる。

 そんなことを考えてしまっていた。



「…はい。申し訳ないです。」


「いいんだ。俺の方こそ勝手ですまない。」



 二人で初めて見た花火は、美しくて、儚くて

 ぼやけていた。




 A、幸せになってくれ。

 そこに俺がいなくとも。

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます♡ いつもコメントくださり、本当励みになります!これからの煉獄さんサイドの展開もお楽しみくださいね! (2023年2月3日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - こんばんは。お疲れ様です☺︎すみません。私が早とちりしてしまいました。続きドキドキしますが楽しみにしてます。完結まで見守っていきますね!新作もその時はぜひ拝読させて頂きますね♪ (2023年1月25日 22時) (レス) @page50 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん、ありがとうございます♡ 私の書き方が悪くてすみませんが、続編はなく完結いたします!次に移行するという意味でした…!ただ、まだ確定ではありませんが、新作を少しずつ考えていますので…いつかお知らせできるといいです💭 (2023年1月24日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 更新お疲れ様です!いよいよ完結ですね。最後まで2人の物語を見守っていきます。続編もあるとのことでそちらも楽しみにしてますね☘ (2023年1月23日 22時) (レス) @page49 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん!コメントありがとうございます。こちらこそ、本年もよろしくお願いいたします!更新を待ってくださる方が一人でもいてくださることが本当に幸せです。これからも、ときめく物語をお届けしていきますね! (2023年1月6日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年9月6日 22時

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