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190.あの日、打ち消された本当の言葉 ページ40

「…杏寿郎さん。」


「…ん?」


「今日、小野寺さんの奥様がいらっしゃいました。」


 小野寺…かえさんのことか!?



「…そうか。」


 Aに小野寺が亡くなったことは伝えていなかった。

 きっと、かえさんから聞いたことだろう。


「風呂敷をお返ししますとのことで、

 私がお預かりしています。」


 小野寺の羽織を包んで渡した風呂敷のことだろう。

 ご丁寧に返しに来てくれたのだな。



「それから…杏寿郎さんに謝りたいとおっしゃっていました。

 …酷いことを言ってしまったことを。」



「そんなの、死んでしまってはどうにもならない!

 どうして主人が死ななければならなかったのですか!?

 どうして助けてくれなかったのですか!?

 夫を…返して…返してください…!!」

 

「…あなたにも大切な人がいるなら、きっとその人は
 
 あなたを失った時に私と同じようになるわ。」





「…聞いたのか?」



「…はい。」

 
 そうか。聞いたのか。


「…彼女はどんな様子だった?」



「新太郎さんの話をする時は、

 涙を流して、言葉を詰まらせていました。」



 無理もないだろう。

 最愛の人を亡くしてからまだ1年程だ。



「…でも、彼女は前を向いていました。

 亡くなっても、新太郎さんがそばにいてくれていると
 
 信じて、前を向いていました。」



 Aはそう言うと、俺の左手にそっと触れた。

 その柔らかな手が懐かしく切ない気持ちにさせる。



「…杏寿郎さん?

 私はどうしてもお聞きしたいことがあります。」



 彼女の真剣な声に俺はしっかり受け止めようと

 彼女に身体を向けた。



「…なんだ?」



「…1年前の花火大会の日、私に別れを告げる前に、

 杏寿郎さんは何か言いましたよね…?」




 色とりどりの花火の光がAの頬を照らして艶めく。



「…あの時、花火の音で

 何と言ったのか分からなかったのです。


 でも、別れを告げる前の表情とは…

 どこか違った気がするのです。


 あの時、何とおっしゃったのですか…?」



 
 あの日、あの瞬間、

 届けと思いながら、届かなかったことに安堵していた。



 Aは俺の少しの表情の違いにも気づいていたんだ。



 参ったな…彼女には到底敵わない。

 
 ぼやけていく視界のまま、

 俺はあの日伝えたかった言葉を君に渡す。





「愛している。」

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます♡ いつもコメントくださり、本当励みになります!これからの煉獄さんサイドの展開もお楽しみくださいね! (2023年2月3日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - こんばんは。お疲れ様です☺︎すみません。私が早とちりしてしまいました。続きドキドキしますが楽しみにしてます。完結まで見守っていきますね!新作もその時はぜひ拝読させて頂きますね♪ (2023年1月25日 22時) (レス) @page50 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん、ありがとうございます♡ 私の書き方が悪くてすみませんが、続編はなく完結いたします!次に移行するという意味でした…!ただ、まだ確定ではありませんが、新作を少しずつ考えていますので…いつかお知らせできるといいです💭 (2023年1月24日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 更新お疲れ様です!いよいよ完結ですね。最後まで2人の物語を見守っていきます。続編もあるとのことでそちらも楽しみにしてますね☘ (2023年1月23日 22時) (レス) @page49 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん!コメントありがとうございます。こちらこそ、本年もよろしくお願いいたします!更新を待ってくださる方が一人でもいてくださることが本当に幸せです。これからも、ときめく物語をお届けしていきますね! (2023年1月6日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年9月6日 22時

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