検索窓
今日:1 hit、昨日:5 hit、合計:15,784 hit

188.夏の風物詩 ページ38

Aとの一件からしばらく、

 俺は彼女と少し距離をとるようになった。


 今はそれがお互いのためのように思えたからだ。

 話はするが、本当に他愛もなく、深くもない話。


 時間というのは不思議なもので、

 次第にその距離感に慣れていく自分がいた。



 季節は進み、あっという間に梅雨が明け、

 太陽が身を焦がす暑い夏がやってきた。



「旦那!ありがとうね!助かったよ〜!」


「うむ!お安い御用だ!」


「杏寿郎くんは頼りになるね。なあ、母さん。」


「本当よ〜!」


 任務の前にお腹を満たすために寄った店で、

 店主の親父さんが足を怪我してしまったとのことだった

 ので、代わりに買い出しを手伝っていた。


「これ、一杯サービスだよ。」


 怪我した足を庇いながらゆっくりと歩いて来た店主は

 包むような声でそう言った。

 
 ゴツゴツとした手が机から離れると、
 
 そこには一杯のコーヒーカップが置かれていた。


 コーヒーの良い香りが鼻をくすぐる。


「うむ。有り難くいただくとしよう!」


 カップを手に取った時、ある掲示が目に止まった。


「…花火大会。」


 俺の呟きを拾った店のおばさんが、

 お盆に羊羹を乗せてこちらにやって来た。


「ああ、そうそう!今夜は花火大会よ!

 私の知り合いに花火職人がいてね、

 今年も気合が入っているみたいよ!」


「そうか!花火を作るのは大変だと聞いたことがある!

 綺麗に打ち上がる花火は職人さんの努力の結晶だな!」


「そうだねえ。杏寿郎くんは誰かと見に行くのかい?」



 店主の優しい声と共に、1年前の花火大会が思い出された。


 Aと見た打ち上げ花火。

 ぼやけた色とりどりの光の粒。

 微かに香る火薬の匂い。



 瞳を濡らした、A。
 

 もう二度と一緒には見られない。



「残念ながら、今夜は任務があるので

 見ることはできないかもしれない!」


「あらあ、そう。旦那、気をつけてね。」


「杏寿郎くんたちのお陰で

 俺たちは平和に暮らせているのだからね。

 本当、いつもありがとうよ。」



「うむ!こちらこそ、憩いの場を守り続けてくれていて

 感謝の思いでいっぱいだ!

 親父さん、まずは怪我が治るよう無理はしないで

 いつでも頼ってくれ!」

189.君とあの場所で→←187.人の想い



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (44 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
61人がお気に入り
設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます♡ いつもコメントくださり、本当励みになります!これからの煉獄さんサイドの展開もお楽しみくださいね! (2023年2月3日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - こんばんは。お疲れ様です☺︎すみません。私が早とちりしてしまいました。続きドキドキしますが楽しみにしてます。完結まで見守っていきますね!新作もその時はぜひ拝読させて頂きますね♪ (2023年1月25日 22時) (レス) @page50 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん、ありがとうございます♡ 私の書き方が悪くてすみませんが、続編はなく完結いたします!次に移行するという意味でした…!ただ、まだ確定ではありませんが、新作を少しずつ考えていますので…いつかお知らせできるといいです💭 (2023年1月24日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 更新お疲れ様です!いよいよ完結ですね。最後まで2人の物語を見守っていきます。続編もあるとのことでそちらも楽しみにしてますね☘ (2023年1月23日 22時) (レス) @page49 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん!コメントありがとうございます。こちらこそ、本年もよろしくお願いいたします!更新を待ってくださる方が一人でもいてくださることが本当に幸せです。これからも、ときめく物語をお届けしていきますね! (2023年1月6日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年9月6日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。