181.贈り物の真意 ページ31
華やかに咲いた桜は
あっという間に散り行き、
命芽吹く新緑の季節がやってきた。
今日は久しぶりに任務の合間を縫って生家を訪れていた。
「ただいま戻りました!」
「兄上!おかえりなさい!」
「しばらく戻れずにすまないな!
千寿郎、また大きくなったな!」
この年頃の子は少し見ない間にも成長していく。
「え!?そうですか!?変わりませんよ!」
「はは!兄にはそう見える!
任務まで少し時間があるので、家族の顔を見に来た!
皆、息災か?」
「はい。父は相変わらず部屋からは出ませんが…
元気に暮らしています。
…あ!今日はAさん、刺繍工場がお休みの日なので
家に来て家事の手伝いをしてくださっていますよ。」
そうか。A、今日は家にいるのだな。
彼女に会うのも久しぶりだ。
「杏寿郎さん。お戻りになられたのですね。
ご無沙汰しております。おかえりなさい。」
「うむ。Aも元気そうで良かった!」
Aは優しく微笑むと、「今、お茶を入れます」と言って
奥の部屋へと向かって行った。
*
爽やかな風が吹き込む縁側に腰を下ろし、庭を眺める。
燃ゆるような緑は生命力溢れ、自身にも力をくれるようだ。
「杏寿郎さん。」
Aは近くまで来るとそばに腰を下ろした。
「…ん?」
「今日で二十歳ですね。」
「…そうか!この頃忙しなくてな、すっかり忘れていた!」
「お誕生日、おめでとうございます。」
彼女は風呂敷に包まれたものを俺に差し出した。
「これは?」
「私からのささやかな贈り物です。」
俺は風呂敷をそっとほどき、
中に入っているものを取り出した。
「…ハンカチ?」
「はい。使うことも多いでしょうから。」
ハンカチを贈る意味。そういうことなのか、A。
そこには花の刺繍が施されている。
「…そうか。この刺繍は君が?」
「はい。"アヤメ"という花です。
杏寿郎さんの誕生花なのですよ。」
「そうなのか!とても綺麗に縫われているな。ありがとう。」
その小さな手で一生懸命に作ってくれたのだと思うと
胸がいっぱいになり、俺は彼女の右手を手にとった。
その手は水仕事などで少し荒れていた。
「…汚い手ですから。」
「…いや、とても素敵な手だ。」
A、贈り物の真意をどうか聞かせて…
「それで…君はどこへ行ってしまうんだ?」
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狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます♡ いつもコメントくださり、本当励みになります!これからの煉獄さんサイドの展開もお楽しみくださいね! (2023年2月3日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - こんばんは。お疲れ様です☺︎すみません。私が早とちりしてしまいました。続きドキドキしますが楽しみにしてます。完結まで見守っていきますね!新作もその時はぜひ拝読させて頂きますね♪ (2023年1月25日 22時) (レス) @page50 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん、ありがとうございます♡ 私の書き方が悪くてすみませんが、続編はなく完結いたします!次に移行するという意味でした…!ただ、まだ確定ではありませんが、新作を少しずつ考えていますので…いつかお知らせできるといいです💭 (2023年1月24日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 更新お疲れ様です!いよいよ完結ですね。最後まで2人の物語を見守っていきます。続編もあるとのことでそちらも楽しみにしてますね☘ (2023年1月23日 22時) (レス) @page49 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん!コメントありがとうございます。こちらこそ、本年もよろしくお願いいたします!更新を待ってくださる方が一人でもいてくださることが本当に幸せです。これからも、ときめく物語をお届けしていきますね! (2023年1月6日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume
作成日時:2022年9月6日 22時