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180.咲かずと知れども ページ30

【柳田吉次 side】
 
 お手洗いから戻って来た彼女は

「目にゴミが入ってしまった」だなんて、

 嘘をついて笑ってみせた。


 食事を終えると、川沿いを二人で歩き始めた。

 雪を纏った草花は白く儚く佇んでいる。



 胸に手を当て、一息つくと、

 Aさんの顔を見つめて口を開いた。


「はじめは一目惚れだったんだ。

 素直に可愛いなって思った。

 そこで終わるかなと、私自身も思っていたのだけれど、

 あなたの直向きな姿勢や、周りに優しいところ、

 その性格までも愛おしいなって…

 気づいたら、あなたのことばかり考えるようになった。」



「吉次さん、あの、私…」



「ははっ。分かっているよ。

 でも少しだけ待って、私に最後まで言わせて。」


 あなたの答えなんて、聞かずとも分かっている。

 それでも今だけは私の方を向いて欲しい。


 私は、Aさんの両手を自身の両手で包み込んで、

 思いの丈を伝える。


「Aさん、私はあなたのことが好きです。」


 叶わないと知っているから、

 この言葉も泡となって弾けて消えてしまう運命だと

 分かっているから、切なくて…


 あたたかな雫が頬を伝った。



「…分かっているのですよ。あなたには想い人がいること。

 それでも私はあなたを好きになってしまった。」


「…吉次さん。」


「せめて気持ちだけでも…伝えたくてね。」


 久しぶりに恋をした。

 また誰かをこれほど好きになるなんて思いもしなかった。


「ありがとうございます。すごく嬉しかったです。」


 こちらこそ感謝しているよ。

 こんな素敵な気持ちを思い出させてくれてありがとう。


「泣くなんて、情けないなあ。かっこつけられなかったね。」


「…いえ。」


「…あなたの想い人はあの人でしょう?

 以前、お家の前でお会いした…」

 
 彼女は驚いたような顔をした。


「Aさんは素直だからね。」


「…私、振られてしまったのです。
 
 だから、もう叶わない想いなのですが…」


「人の想いは良くも悪くも変わるものだよ。

 好きなだけ想えばいい。

 またいつか、あなたの方を向くかもしれないよ?

 それに私だって、気の済むまではあなたを想い続ける。」


「…吉次さんは、やっぱり大人です。」


「ははっ。それはもういい大人だからね。

 今日はありがとう。家まで送るよ。」


 咲かずと知れども、あなたの胸に。



 柳田吉次 side 終

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます♡ いつもコメントくださり、本当励みになります!これからの煉獄さんサイドの展開もお楽しみくださいね! (2023年2月3日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - こんばんは。お疲れ様です☺︎すみません。私が早とちりしてしまいました。続きドキドキしますが楽しみにしてます。完結まで見守っていきますね!新作もその時はぜひ拝読させて頂きますね♪ (2023年1月25日 22時) (レス) @page50 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん、ありがとうございます♡ 私の書き方が悪くてすみませんが、続編はなく完結いたします!次に移行するという意味でした…!ただ、まだ確定ではありませんが、新作を少しずつ考えていますので…いつかお知らせできるといいです💭 (2023年1月24日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 更新お疲れ様です!いよいよ完結ですね。最後まで2人の物語を見守っていきます。続編もあるとのことでそちらも楽しみにしてますね☘ (2023年1月23日 22時) (レス) @page49 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん!コメントありがとうございます。こちらこそ、本年もよろしくお願いいたします!更新を待ってくださる方が一人でもいてくださることが本当に幸せです。これからも、ときめく物語をお届けしていきますね! (2023年1月6日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年9月6日 22時

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