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164.素敵な男性 ページ14

「…杏寿郎さん。」

「この人は君のご家族?

 隣の男性がAに微笑みながら問う。

「あっ、いえ。私がお世話になっているこのお家の方です。

 私は身寄りがないので…」


「そうだったのだね。

 こんばんは。柳田刺繍工場の柳田 吉次(やなぎだ よしつぐ)です。

 遅くなってしまったので、Aさんを送りに来ました。」


「こんばんは!

 俺は煉獄杏寿郎です。Aがお世話になります。」


「では、私はここで。またね、Aさん。」


「はい。ありがとうございました。」

 
 正に"素敵な人"だと思った。

 二人で歩いてきた姿は夫婦のようで…


 挨拶を終えて颯爽と帰っていく柳田さんの後ろ姿を

 ぼんやりと見つめていた。


「…刺繍工場で働くことにしたんだな!」


「…はい。働くと言っても、時間も少ないですし、

 毎日というわけではないので…

 杏寿郎さんには伝えていなかったですよね。すみません。」


「いや、問題ない!

 君の人生だ。君の自由にするといい!」


 彼女に向けた言葉。

 それは自分に言い聞かすようなものだった。


「…杏寿郎さんはこれから炎柱邸へ?」


「うむ。」


 数名の隊士を率いての任務。

 屋敷で集合してから向かうことにしていた。


「…そうですか。お身体に気をつけてくださいね!」


「ありがとう!すっかり秋めいてきたな。

 Aも風邪を引かぬようにな。」


 彼女の笑顔や声に胸が張り裂けそうで…

 俺は感情に手綱を握らせまいと心を鎮めていた。


「では、夕餉の準備があるので…」



 そう言って、Aが門をくぐろうとしたとき、

 その小さな後ろ姿、髪に俺が彼女にあげた簪が

 外灯の灯りに照らされて光った。



 咄嗟に彼女の腕を引いてしまった。

 自分でも、どうしてそうしたのかは分からない。

 
「…杏寿郎さん?」


 Aの声で我に返り、

 俺は掴んでいた彼女の右腕を離した。


「…すまない!」

「いえ、大丈夫ですが…何か?」

「いや…家のことを頼むな。おやすみ。」

「…おやすみなさい。」


 鳴り止まない心臓の音を打ち消すように

 足早に生家を出た。


 秋の虫が美しくも切ない音楽を奏でる道を

 静かな足音を立てて歩く。

 感情に支配されて乱しているようではいけない。

 冷静になろう。



「炎柱!」

「煉獄様!お戻りになりましたか!」


「うむ。遅れてすまない!

 まずは鬼の情報共有から始めよう。」

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます♡ いつもコメントくださり、本当励みになります!これからの煉獄さんサイドの展開もお楽しみくださいね! (2023年2月3日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - こんばんは。お疲れ様です☺︎すみません。私が早とちりしてしまいました。続きドキドキしますが楽しみにしてます。完結まで見守っていきますね!新作もその時はぜひ拝読させて頂きますね♪ (2023年1月25日 22時) (レス) @page50 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん、ありがとうございます♡ 私の書き方が悪くてすみませんが、続編はなく完結いたします!次に移行するという意味でした…!ただ、まだ確定ではありませんが、新作を少しずつ考えていますので…いつかお知らせできるといいです💭 (2023年1月24日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 更新お疲れ様です!いよいよ完結ですね。最後まで2人の物語を見守っていきます。続編もあるとのことでそちらも楽しみにしてますね☘ (2023年1月23日 22時) (レス) @page49 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん!コメントありがとうございます。こちらこそ、本年もよろしくお願いいたします!更新を待ってくださる方が一人でもいてくださることが本当に幸せです。これからも、ときめく物語をお届けしていきますね! (2023年1月6日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年9月6日 22時

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