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183.梅雨の鬼狩り ページ33

静かな雨が葉を濡らし、

 畦道(あぜみち)を歩けば蛙の声が響いた。


「そこにいるのは分かっている。

 この辺りで若い女性ばかりを襲っているのはお前だな。」


 雲の切れ間から覗く欠けそうな三日月を背に、

 不気味な気配のする方へ声をかけた。


「よく分かったな、若造。勘の良い奴だ。」


 田から這い上がってきた鬼は顔を二つ持っており、

 上背はかなりある。腐ったような臭いが辺りを包んだ。

 合唱をしていた蛙の歌声は一切聞こえない。



「俺は鬼殺隊 炎柱 煉獄杏寿郎だ。」


「…柱か。それも炎柱。クックックッ。

 俺は知っているぞ。その羽織、遠い昔に見たことがある。」


 歴代の炎柱のことだろうか。


「俺は君を知らない!その時は運良く逃げ切れたようだが、

 ここで会ったが運の尽きだ。

 これ以上罪なき人を傷つけることは絶対に許さない!」


「ああ…そうかよ。」


 鬼が足を上げ、地を踏み締めたその瞬間、

 立っているのがやっとという程に地面が揺れた。


「ほほう。上背があるだけはあるな!

 しかし、俺はお前の攻略方法を既に看破した!」


「何…?いくら柱といえども…」


 地で戦えないのなら、空で戦うのみ…!



 勢いよく地面を蹴り上げて宙を舞う。

 もう一度地面に足を下ろせば、たちまち鬼の好機となり

 足元をすくわれてしまうだろう。


 
 炎の呼吸 壱ノ型 不知火!!


「まさか…!そんな馬鹿なっ…!!!!一太刀で!?

 ぎゃああああああああ!!!!」


 鬼の顔のひとつは禍々しいものだったが、

 後ろ側についているのは酷く悲しい顔をしていた。


「俺は…女に裏切られたのだ…あの女に…」


 ぼろぼろと消えていく鬼は一筋の涙を流した。


「辛い思いがあったのだな。」


「約束をしていたのだ…二人で一緒になると…

 なのに裏切られた…許せなかった…長い間…あの女は

 俺のことを…」


 そっと手を差し伸ばして鬼の瞳を閉じると、

 俺はただ静かに言葉を渡した。


「君のもうひとつの顔はそういうことだったのだな。

 辛かっただろう。しかし、たとえ辛いことがあっても、

 悪に魂を売ってはならない。

 人を傷つけてはいけない。

 憎しみは憎しみを生むだけだ。」


「ふっ…もっと早く…

 お前に出会えていれば…良かったよ、若造。」


 風にさらわれた鬼の灰は闇へと消え去った。

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます♡ いつもコメントくださり、本当励みになります!これからの煉獄さんサイドの展開もお楽しみくださいね! (2023年2月3日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - こんばんは。お疲れ様です☺︎すみません。私が早とちりしてしまいました。続きドキドキしますが楽しみにしてます。完結まで見守っていきますね!新作もその時はぜひ拝読させて頂きますね♪ (2023年1月25日 22時) (レス) @page50 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん、ありがとうございます♡ 私の書き方が悪くてすみませんが、続編はなく完結いたします!次に移行するという意味でした…!ただ、まだ確定ではありませんが、新作を少しずつ考えていますので…いつかお知らせできるといいです💭 (2023年1月24日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 更新お疲れ様です!いよいよ完結ですね。最後まで2人の物語を見守っていきます。続編もあるとのことでそちらも楽しみにしてますね☘ (2023年1月23日 22時) (レス) @page49 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん!コメントありがとうございます。こちらこそ、本年もよろしくお願いいたします!更新を待ってくださる方が一人でもいてくださることが本当に幸せです。これからも、ときめく物語をお届けしていきますね! (2023年1月6日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年9月6日 22時

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