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178.彼女の想い人 ページ28

【柳田吉次 side】

 Aさんが呼んだ"杏寿郎さん"という方は、

 身寄りのない彼女がお世話になっている家の人だそうだ。


 Aさんが彼を見つめる瞳ですぐに分かってしまった。


 彼女は"杏寿郎さん"を大切に想っていることを。

 
 それでも、私は彼女の直向きな姿勢に惹かれていった。


 募る想いを忍ばせながらも季節は進み、

 彼女と出会った秋から冬へと世界は衣替えをした。


「はあ…」


 休憩中のAさんは、軒下で手を合わせて息を吐いた。

 吐息の白さからかなり冷えていることが分かる。


「今日は一段と冷えますね。」


 私はそう言って彼女の首にマフラーをかけた。


「柳田さん!」

「あなたに差し上げます。」

「そんな!悪いですよ。」


「遠慮しないで。

 秋頃も君は無理をして体調を崩したでしょう。

 早く家に帰って温まりなさい。」


「…ありがとうございます。」


 そう言った後、彼女の目は遠くを見つめて

 何かを考えているようだった。

 誰かへ思いを馳せているようなそんな瞳だった。


「Aさん…?」


「…あ!すみません。」

 
 ここのところ元気がない。

 その原因はなんとなく感じ取れた。


「お疲れのようですね。

 そうだ!明日は仕事も休みですし、

 よかったら一緒に出かけませんか?」


 あまりにも唐突過ぎただろうか。


「気晴らしにと思って、付き合ってください。」


「分かりました。ぜひ、ご一緒させてください。」


 断られると思っていたが、彼女は快く誘いを受けてくれた。



 ◇



 そうして約束の日がやってきた。

 駅で一人、彼女が来るのを待つ。


 空は灰色で、そこからは白い雪が落ちてきた。

 冷たい雪が頬を濡らすも、Aさんに会えるのが

 嬉しくて気にもならなかった。

 叶わない恋だと分かっている。

 しかし、この想いを伝えずして生きていくことは

 私にはできない。



 彼女を連れてお洒落な食事処へと向かった。

 店に着いて椅子に腰を下ろし、

 料理を注文するとAさんは口を開いた。


「柳田さん」


「吉次でいいよ。むしろ、今日はそう呼んで欲しいかな。」


「…えっと、では、吉次さん。」


「なあに?」


「失礼なことと承知してお聞きしますが…

 吉次さんは…恋人とかはいたことはあるのですか?」


 思いもよらぬ問いに目を丸くした。


「ははっ。あなたは単刀直入に聞くんだね。面白い子だね。」

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます♡ いつもコメントくださり、本当励みになります!これからの煉獄さんサイドの展開もお楽しみくださいね! (2023年2月3日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - こんばんは。お疲れ様です☺︎すみません。私が早とちりしてしまいました。続きドキドキしますが楽しみにしてます。完結まで見守っていきますね!新作もその時はぜひ拝読させて頂きますね♪ (2023年1月25日 22時) (レス) @page50 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん、ありがとうございます♡ 私の書き方が悪くてすみませんが、続編はなく完結いたします!次に移行するという意味でした…!ただ、まだ確定ではありませんが、新作を少しずつ考えていますので…いつかお知らせできるといいです💭 (2023年1月24日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 更新お疲れ様です!いよいよ完結ですね。最後まで2人の物語を見守っていきます。続編もあるとのことでそちらも楽しみにしてますね☘ (2023年1月23日 22時) (レス) @page49 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん!コメントありがとうございます。こちらこそ、本年もよろしくお願いいたします!更新を待ってくださる方が一人でもいてくださることが本当に幸せです。これからも、ときめく物語をお届けしていきますね! (2023年1月6日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年9月6日 22時

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