アヤメのハンカチ【煉獄杏寿郎】

20.見慣れない洋服の女性 ページ20

「その人から手を離せ！」

　俺が声をかけると

　大柄の鬼がこちらを振り返る。


　その腕の中には、ひとりの女性が…

　どうやら怪我をして意識を失ってしまっているようだ。


「聞こえなかったのか？

　その人から手を離せと言っている。」


「稀血…稀血…

　オレの飯の邪魔を…するな！！！」


　鬼は女性を離してこちらへ襲いかかろうとしたので

　俺は瞬時に彼女を抱きとめて、小野寺へと引き渡す。



「炎の呼吸 参ノ型 気炎万丈！！」


　一撃で仕留めた鬼は、

　夜の闇の中

　骨すら残ることなく消えていった。




　俺は刀を鞘に納めると、怪我をした女性の元へ駆け寄る。



「隠がこちらへと向かっているようです。」



「うむ。君はそのまま彼女を支えていてくれ！」


　背中からの出血だな。

　あまり見かけない服装をしている。

　西洋のものだろうか。


　俺は隊服の上を脱ぎ、シャツに手をかける。


「炎柱！？」


　自身のシャツを破くと、

　彼女の服をそっと脱がせて

　傷口にシャツを当てて止血する。



「ここにはこれ以上の清潔な布がない！

　これで止血して隠が来るのを待つ！」



　気を失っているが、脈は取れ、呼吸もある。


　きっと大丈夫だ。



　もう少し俺たちが来るのが早ければ…




　
「…煉獄様！

　お待たせしました！」




「うむ！背中に怪我を負っている！

　鬼の爪のようなもので切られたような傷だ！

　止血はしていたが、気を失っている。

　あとは頼んだぞ！」



「承知しました！」



　すぐに隠が駆けつけてくれて

　俺は彼女を引き渡す。




「炎柱、お見事でした。」



「うむ。まさか一夜で2体の鬼と遭遇するとはな。

　しかし、今日はこれで任務終了だ。

　小野寺もご苦労だった！

　奥さんが家で心配しているだろうから、

　早めに家に戻るといい！」



　俺は彼にそう告げると、

　隊服の上を着て帰路についた。

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