アヤメのハンカチ【煉獄杏寿郎】

40.手当 ページ40

　俺はAを横抱きにしたまま

　自室へと連れて行った。


　褥にゆっくりと下ろして寝かせると

　彼女の目をまっすぐに見つめる。


「本当にすまなかった…。」


「煉獄さんは悪くないですから！」


「足を見せてくれるか？」


　君を見失ってはぐれた上に怖い目にも合わせ、

　怪我まで負わせてしまった。


「痛むか？」


「少しだけ…。でも生活する上では問題ないと思うので！」


「そうか。」


　彼女の笑顔に少しだけ安心した。


　俺は以前に胡蝶からもらった鎮痛薬があることを

　思い出し、木箱から塗り薬を取り出す。


「これは胡蝶からもらった鎮痛薬だ。

　任務で怪我した時に俺がよく使っている。」


「ふふっ」


「どうした？」


　Aは口元を押さえながら笑っている。



「いえ、私は煉獄さんに薬を塗っていただいてばかりだなあ

　と思いまして。」


　俺は薬を手に取ると、Aの足に優しく塗り込む。

　彼女の肌はすべすべとしていて触り心地が良い。



「そうだな！

　もし、今度俺が怪我をした時は、

　君に薬を塗ってもらうとしよう！」



「怪我しないでもらいたいですけど…その時は是非！」



　薬を塗り終えると、

　Aは体を起こして俺の正面に座る。



「助けに来てくださって、ありがとうございました。

　でも、どうして場所が分かったのですか？」


「君とはぐれた後、鎹鴉が場所を教えてくれたのだ。」


「鎹鴉？」


　そうか、Aには教えていなかったな。


「鬼殺隊の一人一人についている鴉だ。

　任務の伝令などをしてくれる。」



「そうなのですね！」


「俺の鴉は要と言ってな、信頼できる相棒だ！」


「要にもあとでお礼を言いたいです。」



「今は文を届けに出ているから、

　戻ってきたら君に紹介しよう。」


　要は本当に賢い鴉だ。

　最近は忙しくしてしまっているからな…

　後で好物のものをあげよう。







　薬を塗り終えたので、


　そろそろ彼女に聞かなければ…



　万が一、心に傷を負ってしまっているのなら


　守りきれなかった俺に責任がある。




　時間をかけてでも癒していく覚悟だ。

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