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「ねえ、太宰治さん。あたし、貴方に会いに来たの。」
そう言って彼女は握っていた手を広げる。
パラパラと銃弾らしきものが床に落ちる。
太宰はそれを面白そうに眺める。
「だって、あたしを解放してくれるのは貴方だけだもん。死という代償を持って、
この酸化した世界から。」
彼女は、銃が使えなくて焦っている構成員に歩み寄り、手際よく銃を奪う。
「貴方なら、あたしを殺せるでしょ?」
そして彼女は、その銃を
口に運んだ。
「なっ!」
ポートマフィア下級構成員たちはおどろきの声を上げた。お菓子に変わっているそれを、彼女は黙々と食べる。
「
唇の猪口のかけらを舐める少女を見て、また太宰は面白そうに笑う。
「ねぇ、どうして
少女の疑問に、太宰は嗤う。
「君が一番分かっているよね?
昨日、君はポートマフィアに入って
異能者リストを盗んだのだから。」
場違いな笑みを張り付けっぱなしの少女は、えへへと笑う。
「ありゃ、ばれてた?あたしだって。」
太宰は冷たく笑う。
「当たり前だよ。」
その時、電話が掛かって来た。太宰だ。
『もしもし、太宰くん?終わったかね?』
微かに男の声が少女にも聞こえた。
「いえ、あと一人、12歳の少女が。昨日の侵入者です。」
ふくろうの鳴き声と電話の声だけがひびく。
山の中なだけあり、静かだ。
『ほぅ……なら、良かった。捕虜を一人、連れ帰って貰いたかったからね。』
電話の声が聞こえ、少女の笑顔が引きつった。
「いやだね。あたしを殺してよ。もう、嫌だからさ。」
笑顔を作り直してザッと後退り、太宰を見据えた。
「これ以上生きても、どうせ生きる理由なんて見つからないよ。あたしは、苦しむのは御免だからね。」
窓から飛び降り、逃走を始めた彼女を見て、太宰はニヤリと笑い、電話相手の指示に従った。
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作者名:愛子 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時:2018年3月22日 9時