セイトとセンセー ページ34
どれくらいそうしてたのだろう。
抱きしめられたまま、ぽん、ぽん、と心地いいリズムが頭を撫でる。
と、現状を冷静に理解できた途端に、
｢え…え！あの、すみません…！｣
と離れた。
｢あはっ笑、急に？笑｣
｢え、あ、はい…お恥ずかしいところを…。｣
そう尻すぼみになる声。
｢なーに言ってんの。笑 子供が変な気遣うもんじゃねーよ。笑｣
それに、と付け加えて
｢お前は俺の生徒なんだから。オンナノコとオトコじゃなくても、コドモはオトナに、セイトはセンセーに甘えなさい。｣
｢コドモハオトナニ…セイトハセンセーニ。｣
｢そ。よく言えました。｣
準備室から見える、窓を見つめながらどこか遠い目をして、そう言った。
言わなくても勘違いなんてしないもん。
センセーの意地悪。
｢んー。もうちょい落ち着いてから行こっか。｣
先生はそう言うと、そこ座れば？って私をソファに座らせて、こんなのしかねーけど、ってミルクと砂糖たっぷりのカフェオレを前のローテーブルに置いてくれた。
ちょっと離れたデスクの前にあるコロコロした椅子に腰かけると、
｢賢木ちゃんはさー、進路とか考えてんのー？なんか好きなもんとかあんの？｣
と、先生らしいことを言った。
好きなもの…。
今は、
｢先生、ですかね。｣
｢お？…先生になりたいの？｣
ほんとは、後者への答えだけど。
伝わらないように、咄嗟にマグを傾けてカフェオレを飲む。
｢…へえ。いいじゃん。意外と向いてるかもね。笑｣
｢先生はどうして先生になったんですか？｣
｢えぇ？俺ぇ？｣
俺はー。
ちょっと考えた素振りを見せて、ぐらり、と懐かしむように、少し切なそうに。目の色を、変えた。
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作者名：あやめ
| 作成日時：2023年10月21日 5時
