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期待 ページ26

目を開けると、知らない真っ白い天井。


外から聞こえる声援と、アナウンスの音で段々と自分の状況を思い出す。

ああ、落ちたんだ。





「…あ、起きた?どう?大丈夫?」

「…おはようございます。」


とりあえずそう答えると、はぁーと大きなため息をついたと思えば、片手で頭を抱える深澤先生。



「お前なぁ…っんとに…毎年俺とこの日にここで会ってどうすんのよ?」


…いちいち言い方がちょっとロマンチックですね。とかそういう事しか頭に思いつかない。先生、私頭大丈夫じゃないかもしれません。






「しかも今年はさ、本当やってくれたねーって笑える範囲じゃないんですけど?俺、怒ってんのよ。珍しく。」

「すみません。」



怒られてる。


「放っておけないの、わかる?これ別によくある胸きゅんセリフとかじゃなくてさ。放っておけないんだよ。困る。」




初めて見た、眉間に皺が寄る顔。私が、怒らせてるんだ。

やばいかも、なんか泣きそうだ。



「頼むから、無茶、しないでよ…」


もう目は合わない。
消え入りそうな声に、表面張力ギリギリだった涙が零れ落ちた。







パッと顔をあげた先生は、じっと目を見つめて、それから1回伏せて。

あー、この左右対称の目も好きだなぁ、ってこんな時ですら呑気なことを考えちゃう。



ゆっくりとまた、こっちを見た目は、


見たことないくらい、困ったように、揺れてて。





親指で涙をきゅって拭う。


「こんなかわいい顔に傷ついちゃって。跡に残ったら俺…責任…、」


続きの言葉を、


期待(・・)、する。


しちゃうよ、先生。






去年の体育祭とは違う、もっと、甘い、期待。

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作者名:あやめ | 作成日時:2023年10月21日 5時

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