ご褒美 ページ21
変わってんねー、と、顎を触って考え出した先生。
もっと先生のことが知りたい。
そう思って咄嗟に出た"ご褒美"は、たしかに我ながら突拍子もなかったと思う。
えー…なんだろ、とぶつぶつ考えてる先生。
私の、私へだけの自己紹介を考えてる時間も嬉しくて。…こんなふうに考えちゃうのはちょっと怖いかな。
｢ねぇ、例えば？｣
｢え？｣
｢いや俺もう正直結構カツカツなのよー。笑｣
逆になにが知りたい？ってちょっと顔を傾けて覗きこんでくるのは、確信犯な気がする。
｢えっ、と…特技…とか…｣
馬鹿！もっとなにかあるでしょ！
｢特技かー…あ！生徒には誰にも言ってないやつ、あります。笑｣
そう言って得意げに人差し指を立てる。
古くさいというか、なんか意味わかんない仕草も可愛いと思ってしまうから末期。というかもう、生徒には誰にも言ってない、ってその言葉だけでノックアウト。
｢えー、深澤の特技。クレーンゲームでございます！｣
｢………そう、ですか。｣
｢…えっ、なにその薄い反応？笑 いやほんとよ！しかもビビるくらい上手いの！深澤に取れないものありません！｣
｢…あ、いや、自分で聞いといてアレなんですが、特技聞いてどう反応したらいいか分からなくて。笑｣
｢なんやそれぃ！聞くな聞くな！笑｣
でも、誰にも言わないでおこう。私だけの。
｢あーっ…と…もひとつ思いついたわ、時効のやつ…｣
｢え？｣
ふたつもいいんですか？
｢おれ、あしフェチ。｣
｢っあー……知って、ました……。｣
｢あはっ笑、顔赤！笑 ごめんごめん、出来心で、つい。笑 これはダメだわー、セクハラだー。笑｣
意地悪だー。
｢賢木ちゃん、2年間、よろしくね。｣
どこを見ていいか分からなくなって俯いていた私の顔を、覗きこんでそう言った。
…意地悪だ。
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作者名：あやめ
| 作成日時：2023年10月21日 5時
