運 ページ3
入学して最初の席は、出席番号順で運よくゲットした窓際、一番後ろの席。
1ヶ月ごとに席替えな！なんて担任が言ってたから、ゴールデンウィークも終わったし、もういつしてもおかしくない。
噛み締めるように、ピンクから緑に変わってしまった樹をボーッと眺めていたら、パタパタって軽快な音が近づいてきた。上履きの踵を踏んで、もはやスリッパみたいになっている彼女特有の足音。
「Aー、朝のニュース見た？！」
「菜乃おはよー…見てない。なんかあったの？」
「だと思ったー。なんと！推しの実写映画決まりました！」
「へえ…なんだっけ、松本…松北、だっけ？」
「それ他のメンバーと混ざっちゃってるし！省略されてるし！松村ね！」
菜乃は、入学式の日に初めて話しかけてくれた友達。みんな友達を作ろうとソワソワする、あの初日独特の空気感の中、隣の席の椅子をひいた女の子。
女の子なら話しかけやすいかな、とホッとしたのも束の間、
「白石菜乃です！何ちゃん？」
と速攻で話しかけられた。
「…ねえA聞いてる？」
「あ、ごめん、聞いてなかった。」
「…ほんとAって興味ないのわかりやすいよねー笑 原作の少女漫画も今超話題のやつだけど、どうせA知らなそー笑」
うん、ごめん、多分知らない。笑
こんな感じでも仲良くしてくれてる菜乃とは居やすいし、やっぱり席運はかなりツイてたんだよね。
それに
「はい、おはよー、席つけー」
担任の岩本先生は、他学年からうちの教室に話しかけにくる生徒がいるほど人気の先生。らしい。
社会の先生なのに、なぜか体育の先生顔負けのごつい体格。暇さえあれば空気椅子とかして鍛えてて、たしかにかっこいい。
だから多分、運はいい。
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作者名：あやめ
| 作成日時：2023年10月21日 5時
