俺のクラス ページ20
嫌だったらごめんねぇ、と、間延びした、あんまり申し訳なさそうじゃない声が前から聞こえた。
係が決まってHRが終わると、じゃ早速だけど賢木ちゃーん、お仕事です、なんて捕まって準備室に向かう途中。相変わらず隣で歩くのは気が引けて、半歩後ろ。
｢全然です。何かしたいわけでもなかったので。｣
｢そ？笑 でも、賢木ちゃんの教科係としての働きは学年1だからねぇ、有難いよ。｣
｢…有難いお言葉です。｣
えぇ？なにそれ
｢あと、大変申し訳ないのですがぁ…｣
あ、また。間延びしてて申し訳なくなさそう。笑
｢これは教科係の仕事っていうより、俺のクラスの生徒としてお願いしたくて…｣
はい？
俺のクラス…？
…俺のクラス。
いま1番のパワーワードですよ、それ。そんな事言われたら何でもします！って食い気味に答えたい気持ちをぐっと抑える。
｢はい。｣
簡単な冊子のホチキス留めをクラス分。こんなの余裕。むしろ雑談増えてご褒美です。
｢あんがとー、助かった！なにかご褒美をあげよう！｣
そう言ってまた、高そうなお財布をひらひらと取り出す。
でも、お金で解決ってちょっと寂しくない？なんて欲が出てきた。
なにか、特別な、なにか…。
｢先生、｣
｢ん？なーんでも言ってみ？｣
…先生のその、柔らかい "ん？" って他の生徒にも大人気なんですよ。
まるで大切にされてるんじゃないかって錯覚しそうになるくらい、優しい声と表情。
｢じゃあ、何かひとつ、新しい自己紹介を聞きたいです。｣
｢…んぇ？｣
あんまり驚いたりしない先生の瞳が、ゆらっと揺れた。気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 551人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あやめ
| 作成日時：2023年10月21日 5時
