大人 ページ14
俺は大人なんでこれ、と言って押したのは、コーヒー。無糖の。
｢…大人ですね。｣
｢大人ですよー。｣
大人、早くなりたいな。
｢……そ？｣
｢………え？｣
声に、出てた…？
｢すぐなるよ、大人なんて。｣
一瞬遠い目をした先生はすぐに、目尻を下げて
｢…賢木ちゃんが大人になったら俺もうオジサン！笑｣
と、おどけた。
｢そんな、｣
そんな。
改めて、自分が子供で、先生が大人なことを。
埋まらない歳の差を＿＿＿。
｢…そんな、先生は今ももうおじさんですよ！笑｣
｢俺はまだおにーさんなの！笑｣
そう言ってコーヒーを飲んだ先生は、つめた、って呟いた。
｢あ、冷たいで思い出したー。もういっちょ付き合って。｣
そう言ってまたふらっと歩き始める。
辿り着いた先は、保健室…？
｢先生どこか怪我されたんですか…？｣
｢ん？いーや？｣
そう言いながら引き出しを上からガタガタと開けて、みーつけた、と湿布を手に取った。
｢貼りましょうか？｣
｢や、だから俺じゃなくて。はい賢木ちゃん座ってー。靴下脱いでー。｣
そう言って対面に座った先生は、私の足を自分の膝にのせる。
なにこの状況。
こんなことなら脚やせダイエットしとけばよかった…！
昨日浮腫みとりマッサージしたっけ？
そんな心配もお構い無しな先生。
｢うーわ、さっきより赤くなってんねぇ…。｣
その視線の先には、二人三脚で出来た縄の後がくっきり赤く、腫れていた。
さっき…
さっきって、水道のとき？
｢もっと早くに冷やせば良かったねぇ、ごめんね。｣
そう言って足首に湿布が貼られる。
触れたところから熱が伝わらないか、それだけしか考えられなかった。
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作者名：あやめ
| 作成日時：2023年10月21日 5時
