子供 ページ13
誰もいない校舎に入って教室へ向かう。
楽しかった。こんなに楽しいんだ。
なんて呑気に誰もいない廊下を歩いていると、
｢あー、ちょうどいいとこに。おつかれー。｣
ってこれまた呑気な声が聞こえた。
多分私は、見なくてもこの声が誰なのか、ずっと分かるんだろうな。
ゆっくり振り返ると、真っ白な肌がちょっと日に焼けて赤くなった深澤先生がいた。
｢お疲れ様でした。｣
｢ん、賢木ちゃんもおつかれー。｣
そう言って目の前まで歩いて来た先生はなぜか止まらず、ちょっと着いてきてー、と、そのまま通り過ぎた。
そのまま、なんだか恥ずかしくて半歩後ろをついていく。
｢先生日焼け痛そうですね。｣
｢そうなのよー。俺の美白が！笑｣
｢…羨ましいです。｣
｢お嬢さんも十分白いけどねー。俺には敵わないか！笑｣
敵いませんよーだ。
少し歩くと、校内の端の方にある、人気のない自動販売機の前に着いた。
｢好きなのどーぞ。他の生徒に見られたらみんなに奢んなきゃいけないから内緒ね。その為にここまで来ました。笑｣
｢え、いいですよ…｣
｢いーのいーの！子供は奢られときなさい。笑｣
今日は1日中同級生みたいだった先生は、学生に相応しくない高そうな長財布をひらひらさせる。
普段先生のお財布を見る機会なんてないから、なんだかプライベートを知れた気がして少しドキドキする。
｢私だけすみません…これで。｣
｢ん、りんごジュースね。子供だねぇ。笑｣
でも、子供って言われるのは、なんかやだな。
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作者名：あやめ
| 作成日時：2023年10月21日 5時
