いい名前、いい歳 ページ7
もうギブ！とペンを置くと、両手をあげて降参する深澤さん。
｢ふふ。笑 貸してください。……正解はこれです。｣
｢えー！そっちの綿？！しょっぱなから間違えてんの？！｣
｢はい。笑｣
｢そんな勝ち誇った顔されんのムカつくなぁ。笑｣
そう言う深澤さんの顔は全然ムカついてなくて、むしろ優しく笑ってる。
｢んね、下の名前も書いてよ。｣
｢あ、はい。｣
｢………へー、これでAちゃん。｣
紙に書いた名前をじっと見つめる。そんなに見られるとちょっと恥ずかしいかも。もう少し丁寧に書けばよかった。
｢いい名前だね。可愛い。｣
顔をあげてパチっと目が合った深澤さんは、ゆるりと笑って、そう言った。
｢…深澤さん、も漢字、教えてくださいよ。｣
バクバクと早くなる心臓を誤魔化すように言うと
｢俺ぇ？ん、いーよ、貸して？｣
と、私の手からペンをするりと取って、深澤辰哉、と紙に書いた。一瞬触れた指先なんて、気にしない、気にしてない。
｢たつや、さん？｣
｢そー、俺辰哉。｣
｢なるほど…｣
｢なにその反応？！笑 もっとあるでしょ。笑｣
ごめんなさい、まだ指先に神経が集中してます。
悟られないよう気まずそうに笑う私を見て、悪戯そうに笑った。
｢あとさ、俺勝手に年下だと思ってタメ口使っちゃってるんだけど、おいくつ？｣
｢27歳です。｣
｢おー、いい歳！｣
｢いい歳ってなんですか！笑｣
｢んや？今がいちばん楽しい時だなぁって。笑｣
｢それおじさんが言うやつですよ…｣
｢俺おじさんだもん。31歳。｣
ええ？！…見えない。
｢てっきり20代かと…｣
驚いている私に満足気な深澤さん。
ムカつきますねーなんて茶化したけど、ちょっとだけ、可愛い表情見つけた、なんて思ったり。
｢いい反応すんねー。笑｣
｢…31歳…いい歳ですね…？｣
｢ぉおい？それ完全にいじってんだろ！やめろぉ！笑｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1136人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あやめ
| 作成日時：2023年11月18日 5時
