綺麗 ページ6
次に彼に会ったのはそれから1週間経ったころだった。
｢あ、ふっかさん！いらっしゃいませ。｣
｢こんばんはー。｣
聞き覚えのあるその声と名前に振り向くと、あっ、こんばんはーなんて頭をさげられる。今日はひとりっぽい。
そんな彼はそのままこっちに向かってくると、
｢隣、いーい？｣
と、コテっと頭を傾けた。
…うっ。不覚にも可愛い。
今日も私が1番のりだったから、席は他にも空いてるのに。そう来るとは思わなかった。
｢どうぞ…！｣
そう言って隣の椅子をひくと
｢あらジェントルメン。ありがとー。｣
と席についた。
｢名前、Aちゃん？｣
｢あ、はい。
ん？あれ、名乗ったっけ？とキョトンとしていると、そんな気持ちを読んだのか、クッて喉の奥で笑って
｢ごめんごめん、翼くんがそう呼んでたから。笑｣
｢あぁ、なるほど。…えっと、ふっかさん、ですか？｣
｢んぁ？あー、そうそう。笑 深澤です。笑｣
ふかざわさん。ふっかさん…？
｢てか俺の仕事仲間？いや、友達か？、そいつもわたなべって言うんだよねぇ。｣
｢よく居ますもんね。あ、でも漢字は結構珍しいんですよ？｣
｢あー、あれめっちゃ種類あるもんねぇ。あ！待って俺当てる！昔いっぱい見たことあんのよ。…翼くーん！紙とペンって借りれるー？｣
｢あ、はーい！…どうぞ！｣
｢んーと、あれ、そもそもなべってどれだったけなー。笑｣
｢…私ほんとにマイナーなやつですよ？笑 当たらないかも。笑｣
｢えー、そう言われると燃えるなあ？笑｣
そう言って視線を紙に向ける。
文字よりも目を惹いたのは、手だった。女の私より白いんじゃないかってほどの白い肌と、すらりと細長い指先。
綺麗な手で、お世辞にも綺麗とは言えない文字を書く深澤さんはなんだか楽しそうだった。
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作者名：あやめ
| 作成日時：2023年11月18日 5時
