結果オーライ ページ47
ローテーブルにコト、とマグを置いて隣に座る。
深澤さんはソファを背もたれにして床に座るタイプらしい。
気が動転していたから、今更家の中に深澤さんが居ることをじわじわと実感し始める。
この状況だけでもうなんか恥ずかしい。あの時の私、よく平気で家に連れ込めたな。
…いや？逆だ。
むしろアイツの存在でもなければここまで進展できない自分の方が恥ずかしい。
わざとじゃないけど！進展しようと思って招き入れてないけど！というか何とも思ってない深澤さんからしたら進展でもなんでもないけど！！
ああ、自分で言ってて虚しくなってきた。
｢久しぶりに見たわ、アイツ。笑｣
｢私もです…深澤さんいなかったらどうしてた事か…｣
｢たしかによかったね。笑 はじめて綿ちゃんから電話なんて来たから何事かと思ったわ！笑｣
｢すみません…｣
｢いーけどね。むしろ何もなくても、していーけどね？｣
あったかいコーヒーと、優しい声に落ち着きを取り戻していく。
｢次から退治できるようにスプレー買います。｣
｢ん、それがいちばんよ。もう常備しなきゃダメよ。笑｣
｢ほんとにすみません……｣
｢でもま、頼ってくれてよかったわ。笑｣
男の人のくせに萌え袖で、包むように可愛く持っていたマグをテーブルに置いた。
｢なんか綿ちゃんって全部ひとりで解決しようとしそーだし。｣
まただ。あの真剣な目。
｢男は女の子を守る生きもんだからね。いつでも頼ってよ。｣
｢なんでもひとりで抱えちゃダメよ？｣
そう言ってふわり、と抱きしめられた。
耳も、鼻も、目も。
身体中すべての感覚が一瞬でフル稼働になって。
色んな情報がぐるぐる頭の中に入ってくる。
｢…な、｣
なんで、と言おうとしてもあまりにもびっくりしすぎて声が出てこない。
そんな私の様子にククッと喉で笑うと、
｢ちょーキモかったのに頑張ったから、これくらいのご褒美ちょうだいよ、ね？｣
と、耳元で囁いた。
身体が密着してるからか、声がダイレクトに伝わってくる感じがする。
｢…ふ、かざわさんも。｣
｢ん？｣
｢…深澤さんも、ひとりで抱えこまないでください。｣
｢私にできることがあれば、なんでも力になりたい、です。｣
途切れ途切れ、言葉を選びながらゆっくりと伝えて、背中に腕をまわし、抱きしめ返す。
｢んふ笑、あんがとね。…あー、頑張ってよかったぁ！結果オーライだわ！笑｣
こんなの。
私へのご褒美、だよ。
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作者名：あやめ
| 作成日時：2023年11月18日 5時
