顔負けのシナリオ ページ40
珍しく、深澤さんから
深澤今日暇だったらcottonおいで
なんてトークが来たから、急いで仕事を終わらせて向かう。別に急ぐ必要もないんだけど、なんとなく急いじゃうよね。
暇？とか来て！じゃなくて、"おいで" ってところが深澤さんらしい優しい言い回し。
………。
こんな、連絡ひとつで彼の好きなとこを見つけてくる私も私で怖い。一応小説家だし、優しい日本語を扱う人が好きだから仕方ないの！
｢ねね、綿ちゃんが今書いてるヤツ、バスケが出てくるんだって？｣
｢え？｣
あれ、言ってたっけ？
この話の先も読めない。
｢んや、スタッフさんと世間話してたんだけどさ？綿ちゃんが全く知識ないバスケを作品に盛り込むつもりだって聞いて。｣
｢ああ…そうなんですよ…どうしても入れたいんですけどいかんせん知識がなくて…。今は一生懸命動画見たり、漫画見たりしてます。笑｣
｢漫画ね、あのタプタプしたおじさんのやつね？笑 …んっん、そんな綿さん！｣
わざとらしく咳払いなんてしちゃって、綿さんなんてふざけて畏まる。バラエティに出てる人っぽくて、わざとらしい。
｢百聞は一見にしかずって言いません？｣
はい？
｢まあ…？｣
｢ジャーン！｣
そう言って置かれたのは、来週末都内の体育館で行われる有名なバスケチームの観戦チケット。
2枚。
｢えっ、と…？｣
｢綿ちゃん頭いーんだからわかるでしょ！行くの！バスケ観戦！俺と！｣
｢深澤さんと…？｣
いや、それは流石に…
｢そんな心配そうな顔しないの！笑 ダイジョーブよ。俺、これでもずっとバスケやってたしテレビでもやった事あるくらいバスケ大好き芸能人なの。｣
｢それは意外です。｣
でしょー？意外と動けんのよ、なんて笑って、いやいや話はそうじゃなくてー、と戻される。
｢んで、綿ちゃんは、紛れもなく作品のためのお勉強の一環。そんなふたりが偶然VIP席で出会いました。どうでしょう、そんなふたりは現在進行形で撮影してるドラマの主演と原作者！顔見知りだったんですねー。一緒に見ない方が不思議！てことで隣で見ることになりました！｣
どうよ？とドヤ顔。
よくもまあ、こんなスラスラと悪知恵が思いつくものだ。というか言われて気づいたけど、チケットには小さくVIPと書かれてる。
｢小説家顔負けのシナリオですね…笑｣
じゃあ…、とお礼とともに返事をすれば無邪気に、やった！ってガッツポーズをしてた。
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作者名：あやめ
| 作成日時：2023年11月18日 5時
