リアコ ページ38
撮影にお邪魔する頻度よりも、cottonで顔を合わせる方が多い日々。撮影も折り返し、中打ちと呼ばれる打ち上げも先日終わったくらい。
相変わらず偶然会った深澤さんと飲んでいたら、そろそろ帰るか、と呟いてグラスを飲み干すと、こっちに視線を向けた。
あ、今日はその日ですか。
ストーカーの1件以来、たまに、ほんとーにたまにだけど、一緒にお店を出て夜道を送ってくれることがある。
ほんとは毎回できたらいんだけどねー、って言ってくれたけど、スーパーアイドルにそんなリスクは課せられない。
だから稀に、深澤さんの気分が向いた時こうやって、帰る？なんて無言の視線を送ってくる。
｢翼くーん！俺たち会計でー。｣
｢はーい、ありがとうございますー！｣
そして何故か一緒に出るときだけお金をまとめて払ってくれる。
最初のうちは本当にいいです！なんて何度もラリーしてたけど俺はこういう主義なの！って言って聞かない。
本当は毎回出したいくらい！って言い出した時は怖くなって、分かったのでこういう時だけで勘弁してください、と話は丸まった。納得いってなさそうだったけど。
お店を出て階段をのぼる。
｢もう冬だねー。｣
｢寒くなってきましたね。｣
なんて事ない会話。
｢俺はやっぱり冬が1番好きかも。最初はなんだそれ！って思ってたグループ名も、不思議と1周まわってかっこいんじゃない？！ってくらい愛着湧いたし。笑｣
｢あぁ、雪ですもんね。たしかに冬だ！｣
はー、と白い息を吐く深澤さん。
いつもカウンターの奥で右から見てるから、左から見る深澤さんは新鮮。
キラキラ光る2連ピアスはちょっと、チャラい。
雌雄眼なのか、左目の方がパッチリとした二重。
｢そんな見られると恥ずかしいんだけど。笑｣
｢あ、すいません。｣
｢俺左の方が盛れてるっしょー。笑｣
そう言ってドヤ顔で見下ろされる。
座ってると気づかない意外と高めの背。
｢綿ちゃんちっちゃー。笑｣
私の身長は別に平均ですけどね…！
なんの意味もない会話が逆に、付き合ってるみたいなリアルさで。これが彼のリアコと呼ばれる所以なんだろう、って勝手に考えて勝手にドキドキした。
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作者名：あやめ
| 作成日時：2023年11月18日 5時
