それが聞きたかった ページ34
｢脅迫も恫喝も証拠なんてない。俺はなんの罪の証明もないから。笑｣
言葉だけを見たら余裕そうだけど、海里は相当焦った笑みを浮かべている。
対して深澤さんは、んー…なんて顎に手を置いて考えている素振りをしてるけど、焦ってる様子は1ミリもない。
じわじわとゆっくり、確実に獲物を狙う生き物みたいな空気を纏ってる。
｢証拠ねぇ…確かにないなー。脅迫や恫喝の証拠
｢だろ？俺はふたりが並んでる写真も、Aが綿座だっていう書類の写真も持ってんの。いつでもどこでもバラせるんだよ。｣
いつの間に、そんな写真まで。
頭が、痛い。
｢それって、勝手に綿ちゃんの部屋に入って勝手に個人情報を写真に撮ったってこと？｣
…そういうことになる。
｢正解ー。笑 Aも馬鹿すぎる。笑 だから俺がいてやるって言ってんのに。｣
…こんな人を1度でも好きなった自分が恥ずかしい。
こんなモンスターを作り上げてしまったのは、きっと、私だ。
｢っし！ありがとー！｣
｢は？｣
｢それが聞きたかったの。どんな証拠持ってんのかなって。｣
｢…は、｣
｢ちゃんと録音できましたー。笑｣
そう言って、カウンターにごく自然に置いてあるスマホがカタン、と表に返された。画面にはボイスレコーダーが録音中になっている。
｢…はっ笑｣
薄い笑い声。
｢だからなんだよ？俺はAと付き合ってんだから、不法侵入でもなんでもないよな？Aに頼まれてこの書類撮っただけですけど！｣
この期に及んで苦しい言い訳を、引き攣った顔で述べる。ここまで必死に、自分のプライドを守るためだけに。
つらつら次から次へと言い訳が思いつく才能だけは認めてもいいかもしれない。
｢結局お前らの方がヤバい位置ってのは変わんないから！笑｣
｢まさか、証拠これだけだなんて、そんな甘いこと思ってないよねぇ？｣
今までで聞いた深澤さんの声の中で、1番低い声で、そう言った。
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作者名：あやめ
| 作成日時：2023年11月18日 5時
