どうぞお好きに ページ33
前と違うのは、扉の前に着いても手を離そうとしないこと。
さすがに、と離そうとすればより一層強く握られる。
心配になって見上げると、
｢見て、これ。じょーれんの特権。笑｣
そう言って笑う視線の先には、クローズの看板が出ていた。
扉を開けるとそこには翼と海里がいた。
｢ふっかさん！…と、A？え、てか何？その手。｣
すぐに繋がれた手に視線を落とすと、海里は分かりやすく口角を下げた。
ダメだって！そう思って離そうとしても強く握られたまま。こんなに細いのにどこにこんな筋肉があるんだろう。
｢…A、どういうこと？｣
｢いや、これは、｣
何にも考えてないくせに焦って口を開いた時。
｢海里くんさー、こんな風に綿ちゃん縛りつけて虚しくなんないの？｣
｢はあ？｣
深澤さんの聞いたことない低い声。
一瞬にして海里は血走った目に変わった。
だめだよ、深澤さん。この人、何するかわかんないの。
｢深澤さん、｣
｢綿ちゃん。からだは大切にね、って言ったでしょ？もっとしっかり確実にいこうと思ってたのに、さすがに痩せすぎだから、もう強行突破だよ。｣
何を言ってるのかさっぱり分かんない。
強行突破？
｢あの、ダメです、深澤さん。｣
｢だいじょーぶ。おんなじよ。俺だって守りたいもんがあんの。｣
…守りたいもん。
なにを？
｢さて、海里くん。まず、普通に脅迫・恫喝。綿ちゃんを縛っておくことはもうできません。｣
｢は、笑 なに言ってんの。…お前どの立場で、｣
｢どうぞお好きにー。バラせるならどうぞバラしてください？｣
また、だ。
また目が笑ってない。
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作者名：あやめ
| 作成日時：2023年11月18日 5時
