ヒロイン・ファクター【tatsuya.f】 (ページ4)

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造られる世界ページ4

つい没頭してた、と気づいたのは、また扉のベルが鳴った時。

もう58ページも読んでた。頭の中で造られる世界は誰にも邪魔されないからいいんだよね。

そんな事を考えていると、7人って入れますかねー？と男の人の声が響いた。…7人。多。

｢えっと、ちょっと待ってくださいねー｣

そう言うと翼は少し小声で

｢ふっかさん、詰めてもらうとちょうど満席になるんすけど…いいすかね…｣

と申し訳なさそうに聞いた。

｢ん？あぁ、ありがとね。いーよいーよ、全然詰める！｣
｢助かります。あっちの女の子は俺もよく知ってる子なんで、そこは安心してください。…康二くんの隣は…すいません、多分初めての方なんで。なんかあったら遠慮なく！｣

何だか異様な会話。
スーパー常連の私を差し置いて、VIP待遇すぎない？と気になってチラっと視線を横に向ける。

そこには、目深にバケットハットを被って、眼鏡をかけている人。そんな気にしないでーなんて笑いながら、顔の前でフリフリと振る右手には、高そうな時計がきらりと光る。
芸能人か何かかな？横顔のラインが綺麗な人だなーなんて見ていると、グラスを持って立ち上がったから急いでまた顔を前に戻した。

｢今席空けるんでもうちょっとだけ待っててください！｣

そう言ってバタバタと準備する翼。
…私にはなにもないんかい。別にいいけどさ。笑

ゆっくりと近づいてくる気配。

｢…お隣、すいません。｣

柔らかい声に顔を向けると、初めて、目が合った。