醜い罠 ページ27
いつかはどうにかしなきゃいけなかったし、と、海里を家に招き入れる。
｢ね、Aさ？深澤辰哉、どこで出会ったの、あんなゆーめーじん。笑｣
スーパーで買ったものを冷蔵庫にしまっていた手がピタッと止まる。
｢どこかで見たことあんなーとは思ってたんだよね。笑 俺の元カノは流石、アイドルはべらせてるなんてね。笑｣
ヤバい。
こういう時深澤さんならなんて言う？
上手い誤魔化し方が分からず、何にも口から出てこない。…このままじゃ無言は肯定になってしまう。
でも、せっかく深澤さんが、絶妙にプライドを傷つけるため私たちの明言されてない曖昧な関係はこのまま有耶無耶にしたい。
だって多分、こうやって煽れば私はムキになって否定すると思ってるから。きっとこのふたりはそんな関係じゃないって言ってもらいたいための、醜い罠だ。
｢…で。今日はそれ言いに来たの？｣
付き合ってる時は1度もこんな強気な態度取ったことなんて、なかった。それがこんなにも、勘違いな人間を作ってしまったのかもしれない。
初めての反抗に少し狼狽える海里。
｢Aさ、俺といたら絶対幸せになれるよ。俺といる時が1番可愛かった。ね、やり直そ？｣
…こいつ。
結局戻りたい？本当に何考えてるか分かんない。
これが好きな人への対応なの？それとももうムキになって自分のものにしたいのか。
｢いや、それは考えられないよ。｣
｢…は？お前もしかして深澤辰哉にまじなの？｣
｢いや、それは関係なくて。｣
｢やばい、アイドルにまじなのウケるんですけど。笑 ねー、あんまり俺のこと適当に扱わない方がいいよ？笑｣
ぐっ、と口を結ぶ。
｢お前の正体も、ふたりのことも、世間に言うのなんて簡単なんだから。笑｣
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作者名：あやめ
| 作成日時：2023年11月18日 5時
