カウンターテーブル ページ24
気をつけなきゃ、と思ったものの、回避への得策が見つかるわけもなく。
｢おー！A！また偶然。笑｣
ここに偶然もなにもあるか…！と突っ込みたい気持ちを抑えて、店内を当たり前のようにこっちに向かってくる海里に、隣の人に気づきませんように、と祈った。
｢…と、あれ、彼氏？笑｣
｢いえ違います！！友達です！！｣
｢あ、そうなんだ。はじめましてー？Aの元彼です。笑｣
マウントのつもりだろうが、生憎深澤さんにその気はないので何にもなりませんよ…。
さっきまで楽しく話してた深澤さんに目を向けると、一瞬だけ真顔になったけど、そこはプロ。すぐに綺麗な笑顔を作った。
深澤さん、面倒なので絶対名乗らない方がいいですよって思ってると
｢あ、そうなんですか。どうもー。笑｣
って以心伝心成功。
いや、多分伝わったというより、彼の危機管理能力が正常に機能しただけだと思うけど。
深澤さんに小さく、すみません、と謝る。
何が？って笑ってくれる深澤さんは優しい。こんなに失礼な人なのに。
｢ちょっと、というか大分変な人で…。｣
｢あー。笑 今は綿ちゃんもそう思ってるならよかった。笑 まあ俺、席的にも間に挟まっとくから気にしないで。笑｣
優しい。
その後もベラベラと聞いてもない思い出話や、自分の仕事の成果など。プライド高すぎる彼を上手いこと持ち上げてくれてる。
あんた、自分の何倍もすごい仕事してる人によいしょしてもらってるのよ…。
そう呆れていると調子に乗ってきた海里は
｢てかAと行ったあそこのラブホさー？｣
と、あろうことか信じられない話まで始めた。
｢やめてよ。｣
｢ええー？笑 照れてんの？笑｣
｢違うから…。｣
それでも口が止まらない海里。
…なんで好きだったんだろう。最初は優しくて普通の人だったのにな。私が悪かったのかな。
何だか惨めで泣きそうになってきた。
そんな時、カウンターテーブルの下で、キュッと指が絡められた。
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作者名：あやめ
| 作成日時：2023年11月18日 5時
