ヒロイン・ファクター【tatsuya.f】 (ページ18)

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今はまだ side T ページ18

side tatsuya

今日は久しぶりの、メンバー揃っての仕事。最近はありがたいことにみんな個人での仕事も多くて忙しいからねぇ。とは言っても俺は比較的暇な方だと思うけど。自宅警備員ってやつ。わら

｢ふっかさん。｣
｢ん？おお、めめ、おはよー。｣

楽屋で座ってた俺のとこにふらっと現れた大男。

｢俺、ふっかさん見てめっちゃびっくりした。笑｣

…色々言葉が足りてない感じがめめっぽい。でも通じるんだよなぁ、俺も同じこと思ってたから。

｢世間狭すぎるだろ。笑なんだっけ、幼なじみだっけ？｣
｢そうっす。秋葉からAちゃんの名前はよく聞いてたけど、まさか、…あれ。｣
｢ん？｣

Aちゃん、って名前にどくり、と心臓が跳ねる。いい歳して。可愛いから仕方ないよね、うん。
俺的に、今いい感じの女の子がメンバーにバレたこともはずい。変な汗出るわ！
横で俺だけに向けてふわっと笑う綿ちゃんが脳裏に浮かぶ。あーだめだめ、勝手に思い出してる俺の脳よ、やめろ！

｢ふっかさんとAちゃんって、どういう関係？｣
｢…それ聞いちゃう？笑｣
｢あぁ…やっぱいいっす、分かったわ。笑｣
｢ん、いー感じってとこよ。笑｣

綿ちゃんがどう思ってるかは知らないけど。
でも俺、察しはいい方なのよ。感も鋭いし。嫌われてるわけではないだろうなって事はわかる。

てかそもそも、好印象じゃなかったら、そんな男にあんな気を許した雰囲気作っちゃだめっしょ。
…いや、綿ちゃんならやりかねない…？どっか抜けてる感じするもんな…。あーわかんねー。

｢…ふはっ笑ふっかさん相当きてんな。笑｣
｢やめろぉ！笑｣

…でも、こんな風にうつつ抜かしてる場合じゃないのも分かってるつもり。
みんながドラマとか、バラエティとか、モデルとかそれぞれの分野で頑張って。ながーい下積みを経てやっっっと掴んだデビューから数年、知名度も着実に上がってきた。

だから、今はどうこうなるつもりは、正直ない。

恋愛となにが違うんだって言われたら難しいけど、今はただ。
たまに会ってあの子の笑顔に絆されて。仕事の疲れなんてどっかに飛んでく、ぐらいの距離感でいいかなって。今がちょー心地いいから。

今はまだ、ね。