帰せない ページ13
｢いらっしゃいま…あれ、A？｣
忘れもん？って聞く翼の顔を見ると一気に安心する。やばい、なんか泣きそうだ。
｢思ったより早くまた会えたね。笑｣
なんて笑ってこっちを見てる深澤さんだけど、1ミリも笑えてない私を見ると
｢…ん？どした？とりあえずこっちおいで？｣
と、わざわざこっちへ来て、手を引いてくれた。
｢あ、あの…ストーカー…いた…怖くて…。とりあえず…ここに…｣
頭が真っ白で上手く話せない。
それでもストーカーというワードを聞いて、翼も深澤さんも一瞬で顔を強ばらせた。
｢え！大丈夫？何もされてない？そいつは今どこ？店の前いるってこと？｣
矢継ぎ早に質問する翼は扉の方へ向かう。と、
｢翼くん、落ち着いて。｣
深澤さんが低い声を出して、私にしたみたいに今度は翼の手を取って引き止めた。
｢とりあえず中には入って来てないから、ここで落ち着いて考えよ。｣
｢あ、はい…すいません。｣
｢いや、俺も気持ちめっちゃわかる、めちゃめちゃ焦ってるけど。｣
ほんとに焦ってるのかってくらい冷静な深澤さん。深澤さんがいて良かった。
｢とりあえず俺、送るよ。｣
それはまずいんじゃ…
｢いや、流石にふっかさんはまずくないすか？その、なんかあったら…｣
その先は濁す翼。だよね。私もそう思う。
｢でも、ひとりでは帰せないでしょ。｣
｢それもそうすけど…俺が一緒に帰ります。｣
｢このお店どーすんの？まだお客さんいるし。｣
チラッと離れた席に座るお客さんに目線を向ける。
｢いや、でも…｣
｢ん、やっぱ俺送るわ。｣
頭が働かなくて上手くかわすどころか、口を挟むことすらできない。
どうしたらいいんだろ…と使いものになってない脳みそで考えていると、着信が鳴った。
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作者名：あやめ
| 作成日時：2023年11月18日 5時
