ヒロイン・ファクター【tatsuya.f】 (ページ12)

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夜道は気をつけてページ12

事件が起きたのは、ドラマの話も進んで、キャストが確定した頃だった。

結局本当に主演は深澤さんに決まった。
週に1回程度、深澤さんとcottonで顔を合わす度に、先に言うべきかな…でも言いづらい…とはいえ現場で会ってそこで初めて知られるのも…なんて隠し事を抱えながら言い出せずに、ずるずる今日まで至る。

ちなみに深澤さんのいない日に翼に相談したら、

｢なにそれおもろー！運命じゃーん！｣

なんて面白がってなんのアドバイスもくれなかった。使えない！

例に漏れず、今日も言い出せなかった…とお釣りを受け取る。

｢じゃあねー綿ちゃん。夜道は気をつけてね。｣
｢はい。お先に失礼します。おやすみなさい！｣

いつも帰り際に、気をつけてねって言ってくれる深澤さんはきっとモテるんだろうな。そんな小さいことにキュンと来ちゃう私も多分、そのうちのひとり。

10月下旬、随分寒くなってきたなーと、本と財布を片手に帰路についていた。
帰り道は少し入り組んだ細い道を抜ける。なかなか人通りも少なくて、暗くて少し怖い。
だから、同じ道を通る人がいるのは珍しいなーとは思ってた。

全身黒くてニット帽を被った男性が少し間を開けて後ろを歩いてる。そんな格好、傍から見たら完全に犯人だよ！ザ・犯人！
そんな風に悠長に考えていたけど、いや、ちょっと待って。ちゃんとつけられてない？

一応家に真っ直ぐに帰るのは気が引けて、意味の分からない遠回りをするけどどこまでもついてくる。

これは完全に。

ストーカーだ！

とはいえ刺激をしたら何されるか分かんない。
とりあえずラインの1番上にいた秋葉にSOS。ストーカー！助けて！だけ。

足早で歩きながらとりあえず、cottonに戻った。