コールマイネーム４【tatsuya.f】

シルエットだけで ページ28

人生で何かに熱中した事のない私は、そもそもコンサートというものが初めてだった。


関係者入口っていう大層なゲートをくぐって

｢えっと、早川Aです。｣

って名乗れば本当に、どうぞ。なんて通されてしまった。


guest pass って書かれたシールを服に貼って、案内された席につく。





……すごい。
米粒みたいに小さく光る色とりどりのペンライト達は、それだけの人たちが彼らを好きって事を証明している。
辰哉くんも翔太くんも、たくさんの人に愛されている。


独特な高揚感にボケっとしていると、会場は暗転して、黄色い声援が響いた。





焦らしに焦らされた、オープニング映像が大画面で流れる。
Tatsuya Fukazawa の文字と共に、会場内が紫に染まった。




迫力のある大音量のイントロと、煙やら火花やら。
ステージが動き出して現れたのは9人のシルエットだった。







ああ、シルエットだけで分かっちゃうなあ。








申し訳無いけど、8人はだれがどれだか分からなかったけど。




丸まった肩と背中。
体に悪いから姿勢は気をつけた方がいいんだよ、なんて注意すれば、俺のこの気だるげな雰囲気がまたいーのよー。なんて笑って流されたっけ。

姿を見るだけで視界がぼやけて、これから貴方を忘れるための道のりの遠さに、小さいため息が漏れた。






スポットライトが当たる。









爽やかに微笑む辰哉くんは、少しだけ痩せていて、綺麗に笑っていた。


元気そうで、よかった。



…元気じゃなかったとしても、私のせいで元気ないのかな、なんて都合よく考えそうな自分に辟易する。


もう、そういうの、辞めればいいのにね。

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