なんで私に聞いたの ページ9
おお、笑った。って目尻を柔らかく下げる。
笑った…？
｢んや、ずっと真顔か不安そうな顔しててさ？笑わない人だなーって思ってたから。笑｣
｢…私だって、笑いますよ。｣
｢ますよ？｣
｢……笑うよ。｣
内心、ヒヤッとした。
…この人の言う通り、多分私は人より愛想がないから。
それを、こんな一瞬で悟るこの人の観察力に少しだけ背筋が伸びた。
｢てか年齢より先に、名前聞いてなかった！｣
｢あ、たしかに。遅くなりました、早川Aです。｣
名前を聞くと彼は、コト、とマグをテーブルに置く。
そのまま空いた手で頬杖をつき、首をコテンと傾げて。
｢ん、Aちゃん？｣
空気みたいにふわふわと掴めない、澄んだ柔らかい声。
首を傾げてまっすぐにこっちを見る姿は、まるでなにかの雑誌の表紙みたい。
一瞬、呼吸が浅くなる。心臓が、どっ、どっ、と早くなるのを感じた。
名前を呼ばれただけなのに。
恋愛漫画によく出てくるようなドキドキとかキュンって甘酸っぱく胸が鳴らないのは、恋愛慣れしてないせい。
｢…は、い。｣
｢あは笑、返事！笑｣
軽く笑うと彼はまた、コーヒーをひと口。
なんとも言えない空気が流れる。
…あれ。
私だけ？
こういうのって普通、お互いにじゃない？
｢…名前、教えてくれないの？｣
｢あー…んとねー……、ふっか？｣
｢ふっか？｣
｢そ、ふっか。笑｣
ふっか。
…あだ名？
きっと彼、ふっかは名前を教えたくなかったんだろう。やっぱり警戒心強そうだなあ。じゃあなんで私に聞いたのって話だけど。
でもまあ、たしかにただの隣人だし、やすやすと名前を教えた私の危機感の方が…。
そんな事を考えているとふっかのスマホの着信音が響いた。
｢お、来たかな？…じゃー、そろそろ行こーかな。｣
そう言って立ち上がり、玄関へ向かうふっかの後をついて行く。
｢もう鍵、失くさないようにね。｣
｢ん、失くしたらまた来るね？笑｣
まだ警戒してるくせに。
そんな事を簡単に言ってのけるふっかは多分人たらし。直感だけど。
｢ありがとね、助かった！またね、Aちゃん。｣
甘い香水の香りと、苦いコーヒーの匂いが混ざった空気だけが残った。
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あやめ(プロフ) - るなさん» コメントありがとうございます！……見切り発車した秘密のお友達、ご期待に応えられるか分かりませんがこの先も見守って頂ければと思います。笑 (1月20日 4時) (
レス) id: 76de914c7b (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - お話大好きです！渡辺くんとの関係を知ったふっかさんのリアクションが気になります笑笑 これからも楽しみにしてます！ (1月19日 20時) (レス) @page42 id: 35fcb02ad2 (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - まぷさん» まぷさん、ありがとうございます ; ; 全部…嬉しいです。こうやってコメント下さって私が認識してしまったのでもう勝手とは言わせませんよ( ⩌⤚⩌)笑 これからもどうぞよろしくお願いします…！ (1月10日 19時) (レス) @page18 id: 2dd2e7231f (このIDを非表示/違反報告)
まぷ(プロフ) - あやめさんのお話全部読ませていただいてます！勝手にめちゃくちゃファンです、、♡更新楽しみにしております！ (1月9日 22時) (レス) id: a95612f43b (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - 美紀さん» 前作に引き続き、コメントありがとうございます ; ; 糧になったので新作、始めちゃいました。笑 これからも楽しみにして頂けるよう推敲に励みます！ (1月6日 19時) (レス) id: 5b6428e648 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あやめ
| 作成日時：2024年1月6日 7時
